中国、住宅購入の頭金比率引き下げやローン借り入れ制限緩和を示唆

(中国)

北京発

2023年07月31日

中国の住宅都市農村建設部は、住宅購入の頭金比率やローン金利の引き下げ、借り入れ制限の緩和など不動産市場安定に向けた方針について言及外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。倪虹部長が建築会社、不動産会社との座談会で発言したとされる。

倪部長は、「不動産市場の安定した回復の勢いを固めるため」の対策として、以下に言及した。

  1. 1軒目の住宅購入における頭金比率と住宅ローン金利を引き下げ、買い替えにかかる税金(注1)を減免し、個人の住宅ローン借り入れ歴を問わない(注2)。
  2. 住宅引き渡し保証業務を継続し、不動産開発プロジェクト建設と引き渡しを加速。
  3. 低所得者向け住宅の建設や、城中村(注3)改造、平時・緊急時両用のインフラ施設(注4)建設への、建築会社と不動産会社の積極的な参加。

不動産政策の調整については、7月24日の中央政治局会議(2023年7月28日記事参照)で言及されており、倪部長の発言はこれを受けたものとみられる。

現地報道では、多くの都市で既に頭金比率は規定上の最低水準(1軒目20%、2軒目30%)に引き下げられているものの、北京市、上海市などの大都市では引き下げの余地が残されているとしている(「澎湃新聞」7月28日)。

易居研究院の厳躍進総監は、住宅ローン借り入れ歴を問わないようにすることで、買い替えにかかるコストが大幅に低減され、特に大都市での住宅購入に大きな影響を与えるとしている(「北京商報」7月28日)。

中国不動産データ研究院の陳晟院長は、中国の不動産市場は既に世帯平均での住宅所有数が1を超え、以前とは異なり供給が需要を上回る状態になっているとして、現状に合わない制限は調整されていくだろうとしている(「第一財経」7月28日)。

(注1)個人の住宅売却にあたっては、個人所得税などの納付が必要な場合がある。2022年10月からは期間限定で、買い替えにかかる個人所得税還付が実施されている(2022年10月12日記事参照)。

(注2)地方によって、住宅ローン借入にあたり既に借り入れ歴があれば、同一地域に借入者名義の不動産がない場合も、2軒目の購入と判断されるなどの規制が取られている。2軒目と判断されると、1軒目より頭金比率や住宅ローン金利が高くなるなどの措置が取られる場合がある。

(注3)「都市の中の村」を意味する。都市の中で「農業集体経済組織の村人およびそれを継承した組織が使用する、非農業建設用地」に建設されたエリア。居住環境が悪く、インフラが脆弱(ぜいじゃく)などの問題を抱えているとされる。

(注4)平時は観光、保養施設などとして使用し、緊急時は隔離施設などに転用できる施設。

(河野円洋)

(中国)

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