米FRB、FOMC参加者による経済見通しを発表、ソフトランディングに向けて強い自信

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月21日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は9月19~20日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、声明と併せて全地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者19人による中長期見通しを示したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(添付資料表参照)。

政策金利(FF金利)に関しては、2023年は5.6%(前回6月:5.6%)と前回から変化はなかったものの、19人中12人が年内のもう1段階の利上げを予想しており、年内の見通しはほぼ収斂(しゅうれん)したもようだ(注)。また、2024年においては5.1%(前回4.6%)に予測が引き上げられており、利下げ開始が6月時点の見通しよりも後ろ倒しになることが示唆されている。

経済成長率については、最近の堅調な指標を受けて2023年の見通しを2.1%(前回1.0%)に上方修正した。これとともに、2024年の成長率を1.5%(前回1.1%)まで引き上げているが、この水準は米国の民間エコノミストの経済見通し(ブルーチップ2023年9月調査、中央値1.0%)よりも高く、潜在成長率とされる長期見通しの1.8%から大きく乖離することなく成長を続けることを意味している。

失業率については、2023年は3.8%(前回4.1%)、2024年は4.1%(前回4.5%)といずれも下方修正された。2025年も4.1%のまま据え置かれており、これは自然失業率とされる長期見通しの4.0%からほぼ乖離することなく、ソフトランディングすることを意味している。

個人消費支出(PCE)については、2023年は3.3%(前回3.2%)、2024年は2.5%(前回2.5%)とわずかに上方修正された一方、エネルギーと食料品を除いたインフレ率(コアPCE)については、2023年は3.7%(前回3.9%)、2024年は2.6%(前回2.6%)と下方修正された。これらは、最近のエネルギー価格の上昇を反映した結果とみられる(2023年9月14日記事参照)。また、今回は2026年には2%の物価安定目標を達成するという見通しも示された。

今回発表された見通しからは、ソフトランディングに対するFRBの強い自信がうかがえる。しかし、教育ローン返済の再開、ガソリン価格の高騰、新型コロナウイルス禍後の強い消費を支える一因となっていた余剰貯蓄の枯渇(2023年9月8日記事参照)、クレジットカードローンや住宅ローンをはじめとする各種金利の高止まり、厳格化が続く銀行の貸出態度など、今後の消費を下押しするリスクは多い。また、2024会計年度予算審議の難航に伴い政府閉鎖の可能性も指摘されており、これが長期化した場合には各種投資プログラムへの影響も懸念される。引き続き、こうしたリスクが顕在化しないか、注意する必要がある。

(注)今回会合での政策金利誘導目標については、2023年9月21日記事参照。

(加藤翔一)

(米国)

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