8月の米消費者物価指数、前年同月比3.7%上昇と伸び加速、コア指数は引き続き伸び減速

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月14日

米国労働省が913日に発表した2023年8月の消費者物価指数(CPIPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比3.7%上昇と、先月の3.2%上昇から伸びが加速した。市場予測(3.6%上昇)をわずかに上回った。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4.3%上昇で、前月の4.7%上昇から伸びが減速した。前月比では、CPI0.6%上昇(前月0.2%上昇)と伸びが大きく加速し、コア指数も0.3%上昇(前月0.2%上昇)と伸びが加速した(添付資料図参照)。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは3.6%下落(前月12.5%下落)と6カ月連続のマイナスとなったものの、下落幅は大幅に縮小した。うちガソリンは3.3%下落(前月19.9%下落)だった(添付資料表参照)。エネルギー価格については、OPECプラス(注)の減産方針継続による供給制限に加え(2023年8月7日記事参照)、米国経済が好調を維持していることなどを背景に需要が増加していることから、需給逼迫に伴う影響だ。なお、米国エネルギー情報局(EIA)が912日に公表した短期エネルギー見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2023年第4四半期(1012月)まで需要超過の状況が続き、価格の上昇基調が続くと予想されている。

食料品は、4.3%上昇(前月4.9%上昇)、外食は6.5%上昇(前月7.1%上昇)と伸びが鈍化した。

財は0.2%上昇(前月0.8%上昇)と伸びが引き続き大きく鈍化した。内訳では、中古車が10カ月連続のマイナスとなる6.6%減となったほか、新車も2.9%上昇(前月3.5%上昇)と伸びが鈍化している。

サービスは5.9%上昇(前月6.1%上昇)と伸びが鈍化した。物価のうち3割のウエートを占める住居費は前年同月比7.3%上昇(前月7.7%上昇)と引き続き高い水準となっているが、伸びが鈍化した。この結果、住宅を除くサービス価格は前年同月比3.1%上昇(前月3.3%上昇)となった。足元では賃金の伸びも高い水準ながらも低下傾向にあり(2023年9月4日記事参照)、こうした状況がサービス価格にも反映されたかたちだ。

CPIは上昇したものの、コア指数は伸びが減速したほか、ジャクソンホール会議で連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長がさらなる改善の必要性について言及していた住宅を除くサービス価格は(2023年8月28日記事参照)、いずれも伸びが減速した。こうしたこともあり、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)によると、市場関係者の約97%が、9月に開催されるFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が据え置かれると予想している。また、FRBのクリストファー・ウォラー理事は米国メディアのインタビューで、金利の据え置きを支持する発言を行っており(ブルームバーグ95日)、金利据え置きの公算は高まっている。

ただし、依然としてFRBの物価安定目標(2%上昇)からは大きく乖離している状況が続いている。また、いわば瞬間風速を示す前月比で今回の結果を見た場合、エネルギー価格の上昇やこれに伴う輸送サービス価格上昇の影響が大きいとはいえ、前述の3つの数値(CPI、コア指数、住宅除くサービス価格)はいずれも上昇に転じており、これらについてFRBがどのように評価するのか予断を許さない。91920日に行われるFOMCでは、将来的な政策金利やGDP伸び率などに関する中長期の経済見通しも公表される予定で、(1)年内にもう一段階利上げを行うという従来のスタンスが維持されるのか、利下げの開始時期が後ずれするのかといった点や、(2)現時点では経済情勢や雇用情勢は堅調さを保っているが、その持続可能性についてどう考えているのかといった点などが注目だ。

(注)サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などOPEC加盟国と、ロシア、メキシコなど非加盟の産油国で構成。

(加藤翔一)

(米国)

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