第2四半期GDPは好調持続
(メキシコ)
メキシコ発
2023年09月05日
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は8月29日、2023年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(注)を発表した。GDP全体では前年同期比3.6%、季節調整済み前期比0.84%で、第1四半期(1~3月)に続いて好調な数値を記録した。
前年同期比成長率を産業分野別にみると(添付資料表1参照)、農牧・林業・水産は1.9%、鉱工業は4.0%、サービス業は3.5%と全てプラス、季節調整済み前期比(添付資料表2参照)でみても、農牧・林業・水産は0.73%、鉱工業は1.22%、サービス業は0.67%と、全てプラスとなった。特に鉱工業とサービス業の伸び率が目立ち、GDP全体を鉱工業は1.27ポイント、サービス業は2.05ポイント押し上げた。
鉱工業の内訳をみると、製造業が前年同期比1.7%増、前期比0.11%増と、プラス成長を維持したが、2022年の成長率ほどの勢いはない。行き過ぎた通貨ペソ高(2023年5月22日記事参照)が輸出需要の影響を受ける製造業に対して、悪影響が出始めている。一方で、製造業のうち輸送機器製造業は前年同期比11.7%で好調を維持し、半導体供給の問題が改善に向かい、生産台数が伸びている状況を反映した。鉱業は前年同期比2.8%増、前期比0.29%増と堅調に推移した。建設業は、政府主導の公共事業の活発化により、それぞれ14.4%増、6.54%増と急成長を記録した。
サービス業の内訳をみると、卸売業が前年同期比1.2%の一方で、小売業が同5.5%と好調、前期比でもそれぞれ1.34%、1.15%と上向いた。小売業だけでGDP全体を0.53ポイント押し上げている。運輸・倉庫業は堅調な内外需に支えられて、前年同期比3.2%増と堅調だ。伸び率が著しいのは通信・マスメディアと専門サービスで、それぞれ11.1%増、11.4増と、11%以上の伸びを示した。ホテル・レストラン業も、新型コロナウイルス感染拡大の収束により観光業が活性化したこともあり、堅調な伸びを見せていたが、前年同期比3.0%増と伸び率は一服した。前期比でみても1.14%減で、サービス業の中ではビジネス支援に次ぐマイナス成長となった。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日、2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期(7~9月)以降、不振を続けているビジネス支援サービスは、前年同期比9.7%減と8四半期連続のマイナスを記録した。第1四半期の前期比では1.37%増となり、ようやく底を打ったように見えたが、第2四半期では2.94%と、再びマイナスに戻った。
第2四半期GDPの好調受け、中銀は経済成長率見通しを上方修正
メキシコ中央銀行は8月30日付の四半期レポートで、2023年の実質GDP成長率見通しは平均3.0%と発表し、5月発表時の2.3%から0.7ポイントも引き上げた。ジョナサン・ヒース中銀副総裁は「最も驚かされるのは、家計消費が好調なことだ。また、2023年の実質GDP成長率は3%前後で、おそらくそれ以上の成長も十分に可能で、今年(2023年)いっぱいは好調を維持できるだろう」と述べた(「エル・フィナンシエロ」紙8月31日)。
(注)INEGIは、2023年第2四半期から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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