中銀、政策金利を据え置き、利上げは15回連続で停止に

(メキシコ)

メキシコ発

2023年05月22日

メキシコ中央銀行は5月18日、金融政策決定会合を開催し、全会一致で政策金利(注1)を11.25%で据え置くことを決定した。中銀は2021年6月~2023年3月末に15回連続で政策金利を引き上げてきた(2023年4月11日記事参照)。中銀のプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、4月の全国消費者物価指数(INPC)上昇率(インフレ率)が6.25%、コアインフレ率(注2)が7.67%となり、高水準ではあるものの低下していることを受け、物価上昇の後退局面に入ったとし、さまざまな物価上昇圧力が緩和したという認識を示した。しかし、インフレを中期的に見通すのは難しく、上振れリスクも存在するため、現在の金利水準を当面の間は維持する必要があるだろうとし、今後の金利引き下げについては慎重な立場を示した。

インフレ率の見通しとしては、2023年内の4半期ごとのインフレ率をわずかに下方修正したが、依然として中銀の目標である3%±1%の範囲内に収束するのは2024年第2四半期とみており、2023年末時点の見通しとしては4.7%としている(添付資料の表参照)。

耐久消費財消費への悪影響と行き過ぎたペソ高による輸出減速を懸念

中銀は、ペソ相場の安定も視野に入れ、米国との金利差を保つことを考慮し、米国の政策金利引き上げに合わせてメキシコの政策金利を引き上げてきた。2022年後半はインフレ率の上昇幅を大きく上回る政策金利の引き上げ幅となり、実質金利(政策金利-インフレ率)が大きく上昇する結果となった。実質金利の上昇は、ペソ建て短期国債などの利回りを上昇させ、ペソ買い需要を拡大させることで為替相場にも影響を与えた。2023年4月時点のメキシコの実質金利は5.0%に及び、対ドル為替レートも1ドル=18.07ペソ(月平均)と2017年9月以来のペソ高水準となった(添付資料図参照)。

メキシコでは資金調達源としての銀行融資の活用が他国に比して少ないため(2022年10月13日付地域・分析レポート参照)、政策金利引き上げが企業活動に与える影響は他国に比べると小さい。ただし、政策金利の上昇は消費者金融の金利に影響を与えるため、回復基調にある自動車などの耐久消費財の販売に悪影響を及ぼす懸念が強い。また、行き過ぎたペソ高は、米国向けを中心に堅調な輸出にも悪影響を及ぼすほか、過去最高を更新し続ける在外移民からの家族送金(2023年2月7日記事参照)がペソ建てでみると減額することにつながるため、低所得層などの国内消費にも悪影響が及ぶ。市場関係者によると、今回の政策金利引き上げ停止は既に織り込み済みであるため、為替相場に与える影響は小さいとのこと。5月18日時点の対ドル為替レート終値は1ドル=17.70ペソで、前日比0.7%の下落にとどまっている。

(注1)翌日物銀行間金利の誘導目標のこと。

(注2)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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