李強首相がレモンド米商務長官と会談、対話・協力の強化を希望

(中国、米国)

北京発

2023年09月01日

中国の李強首相は8月29日、北京市で米国のジーナ・レモンド商務長官と会談を行った(米国発表による詳細は2023年8月30日記事参照)。

李首相は「健全で安定した中国・米国関係は両国だけでなく、世界にとっても有益だ」として、米国が2022年11月にインドネシア・バリ島で行われた首脳会談(注1)の合意内容に立ち返ると表明したことを歓迎するとした。

その上で、「中国と米国の経済・貿易関係の本質は互恵・ウィンウィンだ」として、政治化、安全保障化することは、両国の企業や人々の利益を損ない、グローバル経済にも大きな影響をもたらすとした。

また、李首相は「中国は最大の開発途上国、米国は最大の先進国」という認識のもと、両国は世界経済の回復とグローバルな課題に対応すべきとした。中国は経済・貿易分野についての対話・協力の強化を望むとし、高いレベルでの対外開放と、市場化、法治化、国際化された一流のビジネス環境の構築に努力し、市場開放を進め、外資系企業の内国民待遇や公平な競争の促進を進めるとした。

中国外交部によると、レモンド長官は、米国政府は中国の発展を妨げるつもりはなく、デカップリングを求めないと述べたとされる。その上で、中国と意思疎通を続け、人工知能(AI)、気候変動、フェンタニル類物質対策(注2)での協力を希望した。

中国の発表では、6月のブリンケン国務長官、7月のイエレン財務長官の訪中(注3)が「双方の協議に基づく」ものとされていた一方、レモンド長官については「中国商務部長の招きに応じた」ものとなっている。この点について、復旦大学国際問題研究院の呉心伯院長は、「双方の協議に基づき」は米国が提案し中国の同意により実現したことを意味するが、今回は中国の招待によるもので、その積極的な態度を示しているとした(「澎湃新聞」8月30日)。

また、8月31日付の「環球時報」は中国WTO研究会の霍建国副会長の意見として、今回の訪中は、中国・米国双方が両国間の経済・貿易関係を非常に重視し、健全な発展を推進するというシグナルを発しており、これは事前の予想を超えたものだとしている。

また同日付の社説では、米国商務省による規制を受けている華為技術(ファーウェイ)が8月29日にスマートフォンの新機種を発表したことを取り上げ、米国による抑圧は失敗したと評した。

(注1)2022年11月16日記事参照。中国は2023年2月に発生した気球撃墜による関係悪化以降、米国に対して同会談の合意に戻るよう主張している。

(注2)医療用麻薬のオピオイドの一種。米国では使用者が死亡する事例が増加しているとされる。米国司法省は6月に、その原料となる化学物質を違法に取引したとして、中国企業・個人を起訴している。

(注3)ブリンケン国務長官の訪中については2023年6月21日記事、イエレン財務長官の訪中については2023年7月11日記事参照

(河野円洋)

(中国、米国)

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