習国家主席がブリンケン米国務長官と会談、衝突回避と相互の利益尊重を要請

(中国、米国)

北京発

2023年06月21日

中国の習近平国家主席は6月19日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官と北京で会談した。習国家主席は、世界は発展し時代は変わりつつあると強調した上で、安定した中米関係が必要とされており、国際社会は両国の衝突を見ることも、どちらかの側に立つことも望んでいないとした。

また、大国間の競争は時代の潮流に合わず、米国自身の問題や世界が直面する課題を解決することもできないとした。その上で、中国は米国の利益を尊重し、米国に挑んだり取って代わったりすることはないとし、米国も中国を尊重し、中国の正当な権益を損なうべきではないとした。

その他、自らの願望に基づいて相手のイメージを作り上げてはならず、ましてや相手の正当な発展の権利を奪ってはならないとした。併せて、米国が理性的かつ実務的な態度で中国と協力し、習国家主席とジョー・バイデン米大統領とのインドネシア・バリ島会談(2022年11月16日記事参照)での合意(注1)を堅持し行動に移すことを求めた。

外交部によると、ブリンケン国務長官はバイデン大統領の見解として、両国は関係を管理する責任と義務があり、これは米国、中国のみならず、世界にとって利益となると信じているとした。その上で、米国はバリ島会談での合意を順守し、「新冷戦」や中国の制度変更を目指さず、同盟関係強化による中国への対抗をせず、「台湾独立」を支持せず、中国と衝突するつもりはなく、中国とハイレベル交流を行い、意思疎通を続け、責任をもって対立をコントロールし、対話、交流、協力を求めるとした。

外交部の北米・オセアニア司の楊涛司長は、ブリンケン国務長官の今回の訪中(注2)による双方の合意事項として、次5点を挙げた(注3、米国側の総括は2023年6月21日記事参照)。

  1. バリ島会談の重要合意を共同で実行し、対立を効果的にコントロールし、対話、交流、協力を推進する。
  2. ハイレベルの交流を維持する。秦剛外交部長はブリンケン国務長官の招きに応じ、双方にとって適切な時期に米国を訪問する。
  3. 両国関係の指針に関する協議を引き続き推進する。
  4. 引き続き中米共同チームによる協議を推進し、中米関係の具体的問題を解決する。
  5. 文化・教育交流の拡大を奨励し、両国間の旅客便増加を前向きに探る。学生、学者、ビジネスパーソンの相互訪問を歓迎するとともに、これを支援し利便性を向上させる。

(注1)2022年11月に行われた習国家主席とバイデン大統領による会談。中国側の発表では、合意事項として(1)双方の外交団が戦略的対話を続け、継続的協議を行う、(2)財政・金融チームによるマクロ経済政策、経済・貿易についての対話・協調を行う、(3)COP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)の成功に向け共同で努力する、(4)公共衛生、農業および食糧安全保障対話を行う、(5)中米共同チームが具体的な問題解決を推進する、(6)各分野での人材交流の拡大を奨励するなどの点が挙げている。

(注2)6月18日には秦剛外交部長と会談(2023年6月19日記事参照)、19日には習国家主席との会談に先駆けて、外交トップの王毅・共産党中央政治局委員(中央外事弁公室主任)と会談を行った。

(注3)楊司長は合意事項のほか、中国側の見解として、(1)中米関係の悪化は米国が誤った中国認識を持っているため、(2)中米関係の波乱について、米国は深刻な反省が必要、(3)バリ島会談での合意を実施することが急務、(4)国が強くなれば必ず覇を唱えるというテンプレートで中国をとらえるべきではない、(5)台湾問題は中米関係の最重要課題であり、最も突出したリスクだ、(6)会談により幾つかの前向きな合意に達したという6点を挙げた。

(河野円洋)

(中国、米国)

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