レモンド米商務長官が訪中、輸出管理の今後の情報交換などで中国と合意

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年08月30日

訪中した米国のジーナ・レモンド商務長官は8月28~29日、北京で中国の閣僚らと相次いで会談した。28日には王文濤・商務部長と会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、レモンド長官は米中が開かれたコミュニケーションラインを確保する重要性を強調したほか、米国の利益や価値観と合致する経済交流を促進する機会について議論した。

米国商務省の発表によると、両閣僚は米中間の協議体の設置などで合意した。概要は次のとおり。

  • 両国の政府高官と民間の代表者が参加する商業問題ワーキンググループを設置する。貿易・投資に関する問題の解決策を協議し、中国での米国の商業的利益を促進する。次官級の枠組みで年に2回開催し、初回は2024年初めに米国主催で行う予定。
  • 米国の国家安全保障政策に対する誤解を減らすために、輸出管理の執行に関する情報交換を行う。初回会合は8月29日に中国商務部で次官補級で実施。
  • 両国の専門家が許認可手続きでの営業秘密と企業秘密情報の保護強化に関する技術的協議を行う。
  • 両国の閣僚が商業・経済問題について定期的に意思疎通を行い、少なくとも年に1回は対面で会談する。

レモンド長官は会談で、米国の労働者と企業にとって公平な競争条件を整え、在中米国企業の公正で透明な待遇を確保する重要性を強調した。また、米国の輸出管理は国家安全保障や人権に明確に影響を与える技術に的を絞った措置で、中国の経済成長を抑制するためのものではないと伝えた。

レモンド長官は29日には胡和平・文化観光部長、李強首相、何立峰副首相とそれぞれ会談した。胡氏との会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、中国が米国への団体旅行を解禁したこと(2023年8月21日記事参照)を評価し、2024年前半に中国で第14回中米観光リーダーシップサミット(注)を開催することに合意した。

レモンド長官は29日、北京から上海への移動中にメディアの取材に対し、知的財産の窃取や改正反スパイ法(2023年7月3日記事参照)などを巡る懸念により、「中国はリスクが高過ぎて投資できないと企業から聞くことが増えている」と語り、一連の会談では在中米国企業が抱えるこれらの問題を追及したと説明した(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版8月29日)。中国政府が国内重要インフラ運営者による米半導体大手マイクロン製品の調達を実質的に禁止したこと(2023年6月5日記事参照)に関し、中国の説明が不十分だと指摘し、この件も会談で取り上げたと明らかにした(ブルームバーグ8月29日)。

王氏との会談で合意した輸出管理に関する情報交換について、米連邦議会下院のマイケル・マコール外交委員長(共和党、テキサス州)ら野党・共和党の議員は批判の声を上げている。同議員らはレモンド長官の訪中に先立ち、輸出管理に関する協議体の設置に反対する書簡を同長官に送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。一方、レモンド長官はメディアの取材で、中国側から輸出管理の緩和や対外投資規制(2023年8月14日記事参照)の撤回を求められたが、拒否したと説明し、「国家安全保障の問題では交渉しない」と言明した(AP通信8月29日)。

(注)米中の旅行・観光産業の企業幹部や政府高官がマーケティングのベストプラクティスや旅行・観光のトレンドについて議論する年次イベント。前回は2019年に米国シアトルで開催された。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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