TikTok、米国でECサービスを正式に開始、アプリ上から商品販売可能に

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年09月20日

中国発の動画共有アプリTikTok912日、米国で試験的に導入していた同社の電子商取引(ECサービス「TikTokショップ」を正式に開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によると、TikTokショップはコンテンツ制作者やブランド、販売事業者にECサービスを提供し、米国内のユーザーはアプリ内の動画やライブ配信からタグ付けされた商品を直接購入できるようになる。また、アフィリエイトプログラムを通じ、コンテンツ作成者は新たな商品マーケティングの機会と販売事業者とのつながりから新たな収入源を得ることが可能になる。そのほか、販売事業者の商品の保管や梱包(こんぽう)、配送まで物流サービスを支援するフルフィルメントプログラムを提供し、外部の決済プラットフォームと連携しているという。10月上旬には米国の15,000万人のユーザーが利用できる見通しだ(ABCニュース912日)。

インフレが長期化する米国では、中国からの低価格商品に特化したECサービスが若年層を中心に支持され、急速に成長している。中国発のECプラットフォームのTemu(ティームー)は20229月のサービス開始以来、月間アクティブユーザー数は1,100万人を記録し、2022年第4四半期(1012月)には、米国でのアプリのインストール数はアマゾン、ウォルマート、ターゲットといった米大手小売業者のいずれも上回った(CNNビジネス219日)。また、衣料品のECサービスを手がけるSHEIN(シーイン)は、米国のファストファッション市場でプレゼンスを高めており(2023年8月30日記事参照)、20203月から20223月の同社の市場シェアは約18%から40%と2倍以上に拡大した(スタティスタ328日)。

中国製品を販売するECサイトが事業を拡大する一方で、米国の規制当局はシーインとティームーのデータ収集や労働慣行への懸念を高めている。米国連邦議会下院の中国特別委員会が6月に公表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、両社とも中国・新疆ウイグル自治区からの商品の輸入禁止を完全に順守していないことを示唆した(2023年6月26日記事参照)。また「米中経済および安全保障審査委員会」が4月に公表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、シーインの成長について「中国のECプラットフォームが規制当局を出し抜き、米国市場での支配的な存在感を高めているケーススタディー」と説明したほか、「デミニミス・ルール」(注)を活用した税関検査の回避といった貿易の抜け穴の悪用や、知的財産権の侵害、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)への不十分な対応など、両社による多数の「物議を醸す」ビジネス慣行が言及された。

TikTokについても、米国民の個人データが中国に流出する懸念の高まりから、20235月に米モンタナ州でTikTokの個人端末での使用を禁止する全米初の州法が成立した(2023年5月24日記事参照)。TikTokは、今回サービスを開始したTikTokショップでは安全な決済システムを提供し、米国内のユーザーのデータは全てソフトウエア大手のオラクルが管理するサーバーで保管・管理されていると主張している(ABCニュース912日)。

(注)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。デミニミスは2016年に成立した「2015年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの200ドルから、現在の800ドルに引き上げられた。

(樫葉さくら)

(米国、中国)

ビジネス短信 0e63b20a88a1f025