米モンタナ州でTikTok禁止法が成立、運営会社や利用者は提訴

(米国、中国)

米州課

2023年05月24日

米国モンタナ州のグレッグ・ジャンフォルテ知事(共和党)は5月17日、中国系の動画共有アプリTikTokの州内での使用を禁止する法案(SB 419)に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。TikTok禁止法は、同州でのアプリの運営や利用、アプリストアでのダウンロードを禁止するもので、2024年1月1日に施行する。違反した場合には1万ドルの罰金、違反が続く場合には追加で1日当たり1万ドルの罰金がTikTokの運営企業、または同アプリをダウンロード可能なアプリストアの運営企業に科される(注)。ただし同法は、TikTokが「外国の敵対者(foreign adversary)」に指定されていない国の企業に買収または取得された場合、無効になる。米国では最近、複数の州政府機関(2022年12月12日記事参照)や連邦議会下院(2023年1月4日記事参照)で、電子端末からTikTokを排除しようとする動きが広まっているが、同州によると、一般利用を禁止する州法が成立したのは今回が初めて。

法案成立を受け、ジャンフォルテ知事は自身のホームページで「モンタナ州は今日、州民の個人データや機密性の高い個人情報が中国共産党によって盗まれるのを防ぐため、どの州よりも決定的な行動を起こした」と述べ、その先進性を強調した。一方、TikTokはツイッターで、数十万ものモンタナ州民が利用するプラットフォームの使用を禁じるのは「違法なもの」とした上で、「モンタナ州内外の利用者の権利を守るための活動を続ける」と述べた。

TikTok禁止法の成立を受け、同社は5月22日、モンタナ州のオースティン・クヌーセン司法長官を相手に提訴した。訴状では、TikTok禁止法が「利用者の言論を事前に抑制するものだ」として、言論の自由などを定めた合衆国憲法修正第1条に違反すると主張している。また、「外交と国家安全保障は、合衆国憲法が州でなく連邦政府に独占的な権限を与えている事項」として、連邦法の専占にも介入していると訴えている。法案が成立した5月17日にも、TikTokの利用者5人が合衆国憲法修正第1条違反などを理由にクヌーセン司法長官を提訴しており、今後の裁判の行方が注目される。

(注)違反した際の罰金は、アプリ利用者には科されない。

(滝本慎一郎)

(米国、中国)

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