米下院の中国特別委、中国発EC企業の調査で「デミニミス・ルール」問題視

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年06月26日

米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」は6月23日、衣料品の電子商取引(EC)を手がけるSHEIN(シーイン)とECプラットフォームのTemu(ティームー)に関する報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これらの中国発のオンラインマーケットプレイス(注1)を通じて、強制労働により生産された製品が米国に流入し続けている可能性に懸念を示す内容となっている。

中国特別委員会は、シーインとティームーに加え、ナイキとアディダスを対象とした調査をしており、同委員会は5月、これらのアパレル関連企業4社に対し、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)の順守の取り組みを問う書簡を送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。同委員会は全社から回答を得たものの、調査は現在も継続中で、今回の報告書は中間報告と位置づけられている。

報告書はとりわけ、シーインとティームーを通じて多くの非課税基準額以下の貨物(デミニミス貨物、注2)が米国に輸入されている現状に焦点を当てた。両社の商品は2022年に米国に輸入されたデミニミス貨物(6億8,500万件)の30%超を占め、2021年のデータに基づくと、2社だけで中国からのデミニミス貨物の半数近くを占める可能性があると分析。デミニミス・ルールにより、これら商品が税関の正式な検査を逃れ、両社が他の小売企業に比べて関税の支払い額を低く抑えている状況を問題視した。さらに、ティームーに関しては、UFLPAの順守体制が不十分などとも指摘した。

中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)はプレスリリースで、デミニミス・ルールに関し、「この抜け穴が悪用され、米国企業に不利な競争条件が築かれていることに厳しい目を向ける必要がある」とした。同委員会は5月に発表した新疆ウイグル自治区に関する政策提言でも、デミニミス・ルールの厳格化を訴えている(2023年5月30日記事参照)。

実際に連邦議会では、デミニミス・ルールの運用を厳格化する複数の法案が民主・共和両党から提出されている。例えば、下院歳入委員会の貿易小委員会で筆頭理事を務めるアール・ブルーメナウアー議員(民主党、オレゴン州)らは6月15日、商務省が指定する「非市場経済国外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、なおかつ米国通商代表部(USTR)の知的財産に関わるスペシャル301条報告書(2023年4月27日記事参照)で「優先監視国」となっている国からの輸入にデミニミス・ルールの適用を禁止する法案を提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注3)。この基準を満たす国は、法案提出時点で中国とロシアのみとなっている(注4)。

(注1)シーインは中国で設立され、現在はシンガポールに本社を置く。ティームーの親会社は中国EC大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)の持ち株会社のPDDホールディングス。

(注2)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。デミニミスは2016年に成立した「2015年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの200ドルから、現在の800ドルに引き上げられた。

(注3)上院でも、マルコ・ルビオ議員(共和党、フロリダ州)らが同様の法案を提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(注4)商務省は2022年11月にロシアの市場経済国としての認定を取り消した(2022年11月14日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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