米衣料品店フォーエバー21の運営会社、中国発の衣料品ECサイトのシーインとの提携を発表

(米国、中国、シンガポール)

ニューヨーク発

2023年08月30日

カジュアル衣料チェーンのフォーエバー21(本社:カリフォルニア州ロサンゼルス)などを運営する米国アパレル運営会社のスパーク・グループは8月24日、衣料品の電子商取引(EC)を手掛ける中国発のSHEIN(シーイン)との提携を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によると、今回の合意により、シーインは米国のブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループと米国のショッピングモールなどの不動産投資信託会社サイモン・プロパティ・グループを含むジョイント・ベンチャー、スパーク・グループの約3分の1の株式を取得し、スパーク・グループはシーインの少数株主となる。

シーインとフォーエバー21は、ともに最新の流行を意識したデザインの衣料品を低価格で販売するファストファッションブランドとして知られているが、シーインはオンラインで商品を販売しているのに対し、フォーエバー21はショッピングモールへの出店を中心に実店舗を展開している。今回の提携により、両社は顧客にリーチする新たな手法を手に入れることになる。フォーエバー21は、約1億5,000万人の顧客を抱えるシーインのECサイトでの流通を拡大することが見込まれる。一方、シーインは、既存の顧客や潜在的な新規顧客が買い物をする米国のモールにおいて、より大きな存在感を示すことになる(CNBC8月24日)。また、米国内のフォーエバー21の実店舗内へのシーインの店舗の併設や、ECサイトで購入された商品の返品を可能にすることといった、新たなアプローチをテストする機会を得ることになる。

シーインは主にZ世代(注1)から支持されており、同社はインスタグラムやTikTokなどのプラットフォーム上でインフルエンサーを起用するマーケティング活動を行っており、近年は米国のファストファッション業界での存在感を高めている。ブルームバーグ(2023年1月4日)によると、新型コロナ禍前の2020年1月時点では、ファストファッションの市場シェアは12%だったが、2022年11月には50%まで拡大した。

他方でシーインは、ファストファッションの生産が環境に与える影響や、非倫理的な労働慣行の疑惑を巡って、強い批判に直面してきた。同社は米国での新規株式公開(IPO)を計画していたが、2023年5月には超党派の連邦議会議員が米国証券取引委員会(SEC)に書簡を送り、同社がウイグル族による強制労働を利用していないことを確認するまではIPOを認めないよう要請した(AP通信2023年8月24日)。また、同社は「デミニミス・ルール」(注2)と呼ばれる非課税基準額以下での輸入を利用することによって、他の小売企業に比べて関税の支払い額を低く抑えていることも問題視されている(2023年6月26日記事参照)。米国の規制当局や議員らが中国に密接なつながりや本社を持つ企業を精査する一方で、シーインはその本社をシンガポールに移転しており、中国では商品を販売していないほか、中国からの綿花の調達も否定している。

(注1)一般的に、1997年~2012年にかけて生まれた世代。

(注2)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。デミニミスは2016年に成立した「2015年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの200ドルから、現在の800ドルに引き上げられた。

(樫葉さくら)

(米国、中国、シンガポール)

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