バイデン米政権が中国で活動する米企業に注意喚起、中国の改正反スパイ法施行を受け

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年07月03日

米国国家防諜安全保障センター(NCSC)は6月30日、中国で7月1日から改正・反間諜法(以下、反スパイ法)が施行されることを受けて、米国企業向けの注意喚起文書を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

注意喚起文書では反スパイ法について、スパイ行為の対象の定義を国家機密および機密情報にとどまらず、国家安全保障上の利益に関わるあらゆる文書、データ、資料、物品(以下、文書など)にまで拡大しているが、明確な定義をしていないと指摘している。これにより、外国の企業、記者、学術関係者、研究者にとって法的なリスクまたは不確定要素を生み出す潜在性があるとしている。また、曖昧な定義に基づいて、あらゆる文書などが中国の国家安全保障に関連があるとみなされ得るとしている。注意喚起文書はこのほかにも、中国が2021年に制定したサイバーセキュリティー法や個人情報保護法、反外国制裁法などを列挙し、これらが中国政府による、同国内で活動する米国企業のデータへのアクセスや管理を可能とする法的根拠になると指摘している。その結果、通常のビジネス活動であっても、中国政府によって、スパイ行為または外国による対中制裁を支援する活動だとみなされた場合は、罰則の対象になり得ると警鐘を鳴らしている。また、これら法律は、米国企業が現地で採用する中国人従業員に、中国政府の諜報活動に協力するよう強制する根拠にもなり得るとしている。

現地の報道によると、2023年の春以降、米国の投資家のために中国企業の情報収集を行っていたとされる米国のコンサルティング企業のベイン・アンド・カンパニーやキャップビジョン、デューディリジェンス企業のミンツ・グループの中国事務所が中国の捜査当局の家宅捜索を受け、拘束される者も出る事件が起きているとされる(CBSニュース6月6日)。

NCSCのセンター長を務めるミリアム・グレース・マッキンタイアー氏は、在中国の米国企業へのリスクが高まっている状況について4月以降、米国企業幹部への説明を進めてきたとしている。また、今回の改正法の施行について、法の適用範囲が拡大したことは「民間企業にとっては非常に問題のあることだ」と懸念を示している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月30日)。米国務省は6月30日付で中国に関する渡航情報のページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「国外移動の禁止や不当な拘束を含む現地法の裁量的執行があるため、中国本土への渡航は再考すべき」との警告文を掲載した。香港とマカオについても同様の警告を発している。

(磯部真一)

(米国、中国)

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