米下院有力議員、中国のマイクロン排除措置に関して日韓との連携を政権に要請

(米国、中国、日本、韓国)

ニューヨーク発

2023年06月05日

米国連邦議会下院のマイケル・マコール外交委員長(共和党、テキサス州)と「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」(中国特別委員会)のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)は6月1日、中国政府が国内重要インフラ運営者による米半導体大手マイクロン製品の調達を実質的に禁止したことについて、日韓企業がマイクロンの市場シェアを奪わないよう両国との連携を要請する書簡をジーナ・レモンド商務長官に送った外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

中国政府による措置は5月下旬に公表されたもので、その後、米国の有力議員らが党派を越えて中国を批判する声明を発しており、バイデン政権の経済閣僚も中国の王文濤商務部長(商務相)との対面会談の際に、懸念を伝える動きが出ていた(2023年5月29日記事参照)。今回のマコール、ギャラガー両委員長からの書簡は政権に対して具体的な行動を要請する内容となっている。その要点の1つが、政権から日本と韓国に対して、両国企業が、中国市場においてマイクロンが失った売り上げを奪わないよう働きかけるべきというものだ。両委員長は、サムスン電子またはSKハイニックスがマイクロンの市場シェアを埋めることに対して、韓国政府は介入しないとしていることに懸念を示している。その上で、これら企業がシェアを奪うことを容認しつつ、同企業に対してCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)や輸出管理について例外措置(注1)を適用することは、中国政府に危険な信号を送るとともに、米韓同盟を弱体化させると指摘している。

また、2018年反ボイコット法(注2)を適用して、米国またはその他の国の企業が、中国政府によるマイクロン製品のボイコットに加担することを禁止することができるかを検証することも要請した。さらに、中国企業に対する輸出管理を一層強化すべきとして、中国半導体メモリ大手の長鑫存儲科技(CXMT)を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載すべきとし、未掲載の理由を問うている。CXMTは、マイクロン製品のボイコットで最も恩恵を受ける可能性がある企業とみられている(ロイター5月23日)。これらの点について、6月15日までに書面で回答の上、議会向けの説明会を行うよう求めた。ようやく閣僚レベルでの対面会談が再開し始めたバイデン政権として、これら議会からの要請に対して、どう対応するか注目が集まる。

(注1)書簡では例外措置の具体的な記載はないが、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)では、米政府から資金援助を受けた企業は中国を含む懸念国で10年間、先端半導体施設に関する一定の取引が禁止されるとなっており、それに対する例外措置とみられる(2023年3月22日記事参照)。輸出管理では、商務省が2022年10月に導入した中国向けの先端半導体関連の輸出管理につき、韓国企業に例外的な許可を導入していることを指しているとみられる(2022年10月12日記事参照)。

(注2)物品や技術、その他の情報の輸出などに従事している「米国人」〔米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す〕が、外国政府が米国の友好国に対してとっている制限的な貿易慣行またはボイコット(取引拒否)政策などへの加担を禁止することなどを義務づける法律。違反した場合、罰金や禁固刑などの罰則が科される可能性がある。詳しくは商務省の解説ページ参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(磯部真一)

(米国、中国、日本、韓国)

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