欧州19産業団体、EU・メルコスールFTAの早期締結を要請

(EU、メルコスール)

ブリュッセル発

2023年07月10日

欧州繊維産業連盟(EURATEX)や欧州自動車工業会(ACEA)など欧州の19産業団体は74日付でEU共同書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出し、EU・メルコスール自由貿易協定(FTA)の早期締結を要請した。19団体はウクライナ情勢やそれに伴う供給制約を受け、EUは輸出市場や重要原材料の供給元の多様化を迫られていると指摘し、より多くの貿易相手とのFTAを締結する重要性を訴えた。特にメルコスールとのFTAは、多くの貿易障壁がある南米市場全体で貿易の機会が増える契機になると経済的な恩恵を強調した。

EUとメルコスールは20196月、FTA締結について政治合意したが(2019年7月1日記事参照)、複数のEU加盟国や欧州議会、EU域内の農業部門が反対し(2022年11月10日記事参照)、現在までに署名、発効に至っていない。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は20236月、南米4カ国を訪問し、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領との会談では同協定を2023年内に締結する意欲をみせた。

しかし、協定締結への道のりは険しそうだ。欧州の現地報道によると、EU2023年に入り、環境分野に関するサイドレターをメルコスールに提案。EUで特に問題視されているアマゾンの森林破壊の抑止・停止などについて交渉の進捗を図ったが、ルーラ大統領は難色を示した。またアルゼンチンは、メルコスールの第62回共同市場審議会(CMC)で、現在の国際情勢に即し、協定文を慎重に見直すべきとした(2023年7月6日記事参照)。

EU側で根強い環境や農業分野における懸念について、共同書簡では、FTA締結はメルコスールが森林保護など持続可能な発展に関する責務を果たす強力なインセンティブになると主張。メルコスールとともに、気候変動や労働者の権利といった課題への具体的な対応策の提示や、EU農業部門が強い懸念を持つアニマルウェルフェアやトレーサビリティ、薬剤耐性(AMR)などの規制に関する対話の進展にもつながると述べた。

また、EUは南米・カリブ海諸国地域における最大の投資元地域で、一部の国とのFTA締結によって2018年以降、貿易は40%増加したと言及。メルコスールとのFTA締結は、EUと南米・カリブ海諸国の関係深化の重要な要素になると、EUに必要な対応を取るよう求めた。

(滝澤祥子)

(EU、メルコスール)

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