米半導体産業協会、業界の現状総括した年次報告書を公開

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月28日

米国半導体産業協会(SIA)は7月27日、米国の半導体業界の現状を総括する2023年版の年次報告書を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

SIAには、米国内外の主要な半導体関連企業が加盟しており、米国半導体業界を代表する団体と位置付けられている。報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は業界の現状を分析するとともに、機会と課題をまとめた内容となっている。機会については、2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)が起爆剤となり、既に合計で2,000億ドルを超える米国への投資計画が発表されていることを強調している(注)。CHIPSプラス法では、米国に投資する半導体関連企業を支援するため、390億ドルの予算が用意されている。所管省庁の商務省は資金援助を希望する企業の申請を3回に分けて募集しており、現時点で第2弾まで公開している(2023年6月26日記事参照)。ジーナ・レモンド商務長官は7月26日、公開イベントに登壇し、「既に400を超える申請が寄せられている」と述べ、CHIPSプラス法の効果を強調した。

SIAは諸外国による同様の支援策も紹介しており、それらによって健全な競争が生まれれば、技術革新とサプライチェーンの多様化につながると評価する一方、非効率な事態が生じないよう国家間の調整が必要と主張している。外国との連携については、自らが主導する米国、カナダ、メキシコの北米3カ国の産学官による「北米半導体会議(NASC)」を紹介した。これは、首脳間の合意に基づいて設けられたもので、各国の特性を生かして北米域内のサプライチェーンを強化するイニシアチブとなる(2023年5月24日記事参照)。

業界にとっての課題については、米中対立による影響、高技能労働力確保のための移民制度と教育制度の改革、自由貿易の促進などを挙げている。特に中国との関係では、米国半導体企業の売り上げ全体の36%が中国市場で占められており、対立の激化は米国の業界にとってリスクだと指摘している。SIAは直近でも、バイデン政権に対して中国を念頭に置いた追加的な半導体関連の規制を導入しないよう要請している(2023年7月19日記事参照)。世界的な半導体市場の見通しについては、供給不足が落ち着き、2023年末までは売り上げの低迷が続くものの、長期的には成長が続いていくと楽観視している。

(注)SIAは別途、2020年5月以降に発表された米国での投資計画をリスト化して公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 8f8cb8a73ec398bd