米半導体業界、バイデン政権に中国を念頭に置いた追加的半導体関連規制を控えるよう要請
(米国、中国)
ニューヨーク発
2023年07月19日
米国半導体産業協会(SIA)は7月17日、バイデン政権に対して、中国を念頭に置いた半導体関連の追加的規制の導入を控えるよう要請した。
バイデン政権は2022年10月に、安全保障上の懸念から、中国向けの半導体関連製品(物品・技術・ソフトウエア)の輸出管理規則(EAR)を強化する措置を導入した(2022年10月11日記事参照)。米国の半導体業界はこれに対して、安全保障の重要性には理解を示しつつも、新規則が複雑かつ不明確で、業界に対する事前調整がなく、米国が単独先行したことで、米国企業だけ競争上不利な状況に置かれかねないと、強い懸念を表明していた。中には売り上げ損失を被る企業がいるとも指摘されていた(2023年2月2日記事参照)。その後、2023年6月末に主要メディアは、バイデン政権が人工知能(AI)半導体に関する対中輸出管理の一層の強化と、米国から中国の半導体産業への投資規制を検討していると報道していた。対外投資規制については、ジャネット・イエレン財務長官らが政権内で検討を進めていることを以前から公言しているが、現時点までに正式な公表には至っていない(注、2023年4月21日記事参照)。
SIAは今回の声明で、バイデン政権が検討する具体的措置には言及していないが、主要な半導体市場の中国へのアクセスは米国企業にとって重要と指摘した上で、「過度に広範で曖昧かつ一方的な規制は米国の半導体業界の競争力を低下させ、サプライチェーンの混乱を招き、深刻な市場の不確実性を引き起こし、中国によるさらなる報復を促す」と警鐘を鳴らしている。声明の最後では、政権に対して中国政府と緊張緩和に取り組むとともに、業界や有識者と現行と将来の規制がもたらす影響を精査するまでは「さらなる規制は控えるよう、政権に強く要請する」と締めくくっている。
なお、アントニー・ブリンケン国務長官を含む政権の閣僚・高官は17日、米国半導体大手のインテル、クアルコム、エヌビディアのトップと会談を行った。出席者は、ブリンケン国務長官の6月の訪中(2023年6月21日記事参照)を踏まえ、サプライチェーンに関する課題や中国のビジネス環境について意見交換を行ったもようだ。中国が米国への報復とみられる措置の導入を決定した中(2023年7月4日記事参照)、産業界にも耳を傾けながら、どのような落としどころを探るのか、バイデン政権の動向に注目だ。
(注)イエレン長官は7月17日、ブルームバーグのインタビューで「中国に対する対外投資の規則案は中国政府側にも説明しており、半導体、量子コンピューティング、AI(人工知能)など、幾つかの分野に的を絞った措置になる見込みだ」と語っている。現在、政権内で詳細に関する議論が進められており、導入前にはパブリックコメントが募集される予定となっている。
(磯部真一)
(米国、中国)
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