李首相がケリー米特使と会談、気候変動での協力強化と先進国の率先した対応を希望

(中国、米国)

北京発

2023年07月31日

中国の李強首相は718日、米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使と北京市で会談した。

李首相は、両国の協力は世界に利益をもたらすとした上で、インドネシア・バリ島での習近平国家主席とジョー・バイデン米大統領との会談(2022年11月16日記事参照)の合意実行により(注1)、両国関係を健康で安定した発展の軌道に戻すべきと主張した。

その上で、グローバルな気候変動への対応は極めて困難な任務のため、中国・米国を含む各国の協力を強化し、「気候変動に関する国際連合枠組み条約」と「パリ協定」で決定した目標と原則を堅持すべきとした。また「共通だが差異ある責任」(注2)に基づき、先進国は率先して排出を削減し、気候変動対策資金(注3)に関する約束を実現するとともに、発展途上国に対してさらなる技術的支援を行うべきとした。

両国関係については、双方が引き続き協力精神を保ち、それぞれの核心的な懸念を尊重し、しっかりとした意思疎通を通じて共通点を見つけ出すべきだとした。その上で、実務的な制度化された協力を探ることや、多国間の気候ガバナンスプロセスの推進、パリ協定の全面的で効果的な実施を希望した。

中国外交部によると、ケリー特使は米国と中国は世界で12の経済大国で、二酸化炭素(CO2)排出国でもあるとした。その上で、米国は両国関係の安定を願うとし、ともに気候変動などの差し迫ったグローバルな課題に対応するとともに、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の成功を推進したいとした。

同日には中国外交トップの王毅・共産党中央政治局委員もケリー特使と会談を行った。

今回の会談について、719日付の「環球時報」は「両国関係が国交正常化以来で最悪の状況にある中で、気候変動は互いが心置きなく話すことのできる数少ない話題の1つ」として、気候変動対応に向けて良いスタートを切ることができたと評価した。

721日付の「中国環境報」は、米国高官による相次ぐ訪中を受け、世界から両国関係改善に対する期待が高まっているとする一方、短期的にはさまざまな要因の影響を受けるため、今後の方向性についてはさらに注視する必要があるとした。

(注1)中国は米国との会談で、一貫してバリ島会談の合意実行を求めている(2023年6月19日記事2023年6月21日記事2023年7月11日記事参照)。

(注2)地球温暖化への責任は全世界共通なものの、歴史的な排出量などを考慮すると、先進国の責任がより大きいため、途上国と差異があるという考え方。

(注3)先進国が発展途上国の気候変動対策のために提供・動員する資金。

(河野円洋)

(中国、米国)

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