米6月の労働需要は減速、若年層の労働参加率の拡大に注目

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月10日

米国労働省が7月7日に公表した6月の非農業部門雇用者数(2023年7月10日記事参照)は前月から増加したものの、市場予想を下回り、特にサービス業を中心に雇用の減速感が示唆された。同省が7月6日に公表した5月の雇用動態調査(JOLTS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを見ても、求人件数は982万件で、2カ月ぶりに1,000万件を下回った。セントルイス連銀が公表した5月の失業者数(609万7,000人)と合わせると、失業者1人当たりの求人件数は1.61件と、2021年11月以降で最も低い水準となった。労働需要は徐々に弱まってきている可能性がある。

また、6月の労働参加率(注)は4カ月連続で62.6%と横ばいだったが、25~54歳では83.5%と、2002年6月以降で最も高い水準となっている。55歳以上のアーリーリタイア層による労働市場への回帰は引き続き鈍いが(2023年7月5日付地域・分析レポート参照)、若年層の労働参加率は回復している。

若年層の労働参加に影響を与え得るバイデン政権の施策の学生ローン返済の一時停止措置は8月末に失効予定だ(2022年11月24日記事参照)。さらに、ジョー・バイデン大統領が2022年8月に発表した連邦政府への学生ローン債務を1人最大1万ドル免除する措置(2022年8月25日記事参照)については、連邦最高裁判所が6月30日、連邦議会の承認が必要として、連邦政府による債務免除は認められないとの判断を示した。学生ローン返済は10月に再開される予定だが、教育省は10月から1年間、返済が滞っても債務者の債務不履行の認定や信用情報の低下が生じないようにするとの措置を発表している。連邦最高裁判所の判断はバイデン政権にとって政治的に痛手だが、雇用面では学生ローン返済に迫られた若年層の労働参加がさらに進む可能性がある。

一方で、6月の失業率(3.4%)が前月(3.5%)から低下し、時給の伸びが高止まりしていることを考慮すると、労働供給は需要に比していまだ過少と考えられる。若年層を中心に労働参加がさらに進み、労働需給の逼迫が緩和することで、賃金上昇圧力やインフレ圧力の緩和につながるかが引き続き注目される。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

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