米教育省、学生ローン支払い停止措置を最長で2023年8月末まで延長

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月24日

米国教育省は11月22日、連邦政府への学生ローン債務について、支払い停止措置を最長で2023年8月末まで延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ジョー・バイデン大統領は2022年8月、連邦政府への学生ローン債務について、1人最大1万ドルを免除するとともに、新型コロナウイルス対応で導入した債務返済一時停止措置を12月末で終了すると発表していた(2022年8月25日記事参照)。しかし、この債務免除措置について複数州で政権が提訴されており、テキサス州連邦地裁では違法との判断が出るなど係争中となっている(2022年11月17日記事参照)。

これらの動きを受け、教育省は債務免除措置の受け付けを停止するとともに、最高裁判所に対して、地方裁判所の命令を解除するよう求める訴訟を提起した。また、同訴訟が2023年6月30日までに解決しない場合には、債務の支払いをその60日後の8月末ごろから再開すると発表した。教育省によると、現時点で2,600万人超から債務免除の申請があり、うち1,600万人分については既に承認されている。しかし、裁判所による違法との判断により、この免除措置は保留となっており、先行きに不透明さが漂っている。

議会予算局(CBO)は債務免除措置による総額を約4,300億ドルとする試算結果を発表しているが(2022年9月28日記事参照)、この免除分は新たな財政負担となる。また、共和党を中心に、債務免除となった人々のバランスシートが改善し、購買力が押し上げられた結果、インフレの要因となり得るという懸念の声も上がっている。バイデン大統領は自身のツイッターで「われわれの学生ローン債務免除に関するプログラムは合法と確信している。しかし、共和党はこれを阻止しようとしているため、プログラムは現在保留中だ」と述べ、共和党を批判している。しかし、高インフレ・高金利下での財政に対する信認の維持は、党派対立が大きく、共和党が2023年1月から始まる連邦下院議会で過半数を確保したことからも(2022年11月17日記事参照)、今後大きな政策イシューとなる可能性がある。今回の学生ローン債務免除措置も含むバイデン政権の財政政策の今後の動きに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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