ASEAN主要6カ国の第1四半期GDP成長率、前期超えはタイのみ

(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

アジア大洋州課

2023年06月29日

ASEAN主要6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の2023年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率の統計が出そろった(注)。前期の成長率を上回ったのはタイのみで、他5カ国では前期から成長が減速した。

各国の第1四半期成長率を高い順にみると、フィリピンが前年同期比6.4%(2022年第4四半期:7.1%)と最も高かった。続いて、マレーシアが5.6%(7.1%)、インドネシアが5.0%(5.0%)、ベトナムが3.3%(5.9%)、タイが2.7%(1.4%)、シンガポールが0.4%(2.1%)だった(添付資料表参照)。

フィリピンのアルセニオ・バリサカン国家経済開発長官が「経済が新型コロナ禍前の高度成長のトレンドへと戻りつつある」と話すとおり、2021年第3四半期から6四半期連続で7~8%の成長を続けてきた。一方、2023年第1四半期の成長率がわずかに鈍化している要因については、金融引き締め政策の影響による個人消費の減速や、世界的な需要低迷に伴う輸出の停滞を挙げた(2023年5月18日記事参照)。次に、6カ国の中で唯一、前期の成長率を上回ったタイについては、好調な個人消費と観光業が牽引し、成長が加速したとみられる(2023年5月19日記事参照)。同国の成長率はロイターの事前予測調査(2.3%)を上回る結果となった。

2023年通年の成長見通し達成に陰りも

第1四半期の成長率が鈍化したことを受け、2023年通年の各国の経済成長見通しに影を落とし始めている。シンガポール貿易産業省(MTI)は5月25日、2023年通年のGDP成長率見通しについて、「0.5~2.5%」とする従来の予測を維持したものの、経済成長率は予測範囲の中央程度にとどまるとの見方を示した。MTIはその理由として、急激な世界的金融引き締めを懸念した消費と企業投資の鈍化などにより、世界経済の下振れリスクが高まることを挙げた(2023年5月31日記事参照)。また、ベトナムでも2022年第4四半期以降、世界経済減速の影響から、コンピュータ・電子製品やアパレルなどの主要輸出産業の生産活動が停滞しており、2023年第1四半期の成長率は前期より2.6ポイント鈍化した。同国のグエン・ティ・フオン統計総局長は「通年のGDP成長率目標(6.5%)を達成するには、残り9カ月で約7.5%の成長をする必要がある」と述べた。今後については「引き続き困難が多くて飛躍的成長はできないが、柔軟な金融政策や地方での公共投資などマクロ経済政策をコントロールすることで、第1四半期(1~3月)と比べて改善していくだろう」との見通しを示した(2023年4月4日記事参照)。

(注)各出所は以下のとおり。インドネシア:インドネシア中央統計庁(BPS)、マレーシア:マレーシア中央銀行/統計局、フィリピン:フィリピン統計庁(PSA)、シンガポール:貿易産業省(MTI)、タイ:タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)、ベトナム:ベトナム統計総局。

(細川雄貴)

(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

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