バイデン米大統領が債務上限停止法案に署名、デフォルトを回避

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月05日

米国のジョー・バイデン大統領は6月3日、連邦債務の上限を停止する「財政責任法案」に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより同法は正式に発効し、タイムリミットとされていた6月5日を目前に、米国債などの債務不履行(デフォルト)は回避された。

前日の6月2日にホワイトハウスの執務室で演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行ったバイデン大統領は、「米国の民主主義が機能する唯一の方法は、妥協と合意を通じて、超党派の合意を形成することだ」と述べ、妥協があったことを率直に認めた上で、「欲しいものを全て手に入れた者はいなかったが、米国民は必要なものを手に入れた。われわれは経済崩壊を回避した」として、今回の成果を強調した。また、ケビン・マッカーシー下院議長(共和党、カリフォルニア州)との交渉について、「われわれは互いに率直かつ誠実で、敬意を払っていた。双方が誠意を持って行動し、約束を守った。両院での最終投票は圧倒的で、誰もが考えていたよりも、はるかに多くの超党派の議員が賛成に回った」(2023年6月1日記事6月2日記事参照)と述べ、同法に賛成した両党議員を賞賛した。

同法は、連邦政府の債務借入残高の上限(現行31兆4,000億ドル)の適用を2025年1月1日まで停止する。同時に、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の国防費以外の支出をほぼ現在の水準に据え置くほか、2025年度は前年比1%増に抑える(2023年5月29日記事参照)。一方で、バイデン大統領は「メディケア(高齢者向け医療保障)など社会保障費は削減から守った。私はクリーンエネルギーへの投資を打ち切ろうとする共和党の動きに、『ノー』と言い、全てを維持した」と述べ、インフレ削減法に基づくこれらの措置に関して、歳出が削減されていないことを強調した(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)。また、予算教書には盛り込まれた、年間所得40万ドル以上の高所得者に対する所得税の最高税率の引き上げ(2023年3月10日記事参照)などを念頭に、「私は富裕層に公平な負担をさせるつもりだ」と述べ、2024年度予算の交渉に意欲を見せた。

今後については、同法を踏まえた2024年度予算の交渉の難航や、民間格付け会社による米国債の格下げなどが懸念される。財務省は、公務員退職・障害者基金などの償還や、新規投資の停止を含む特別措置で資金繰りを乗り切ってきており、現金の残高は約230億ドルと、2015年10月以来の低水準に落ち込んでいる(ブルームバーグ6月2日)。同省は債券を発行して現金の確保に努めると予想されるが、シリコンバレー銀行の破綻などによる信用不安により、銀行の預金残高は流出傾向にある(2023年3月28日記事参照)。資金が預金残高から米国債の購入に向かえば、さらに銀行の流動性不足が進み、信用不安が再燃する可能性も懸念される。

(宮野慶太)

(米国)

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