米国、債務上限停止法案が下院通過、上院審議へ

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月01日

米国の連邦議会下院は5月31日、連邦債務の上限を停止する法案を、賛成314、反対117で可決した。

「財政責任法案」と名付けられた法案は、2025年1月1日まで連邦政府の債務借入残高の上限(現行31兆4,000億ドル)の適用を停止する。同時に、2023年5月27日にジョー・バイデン大統領と下院のケビン・マッカーシー議長(共和党、カリフォルニア州)が合意したとおり、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の国防費以外の支出をほぼ現在の水準に据え置くほか、2025年度は前年比1%増に抑えるなどの内容となっている(2023年5月29日記事参照)。議会予算局の試算によると、同法案により、今後10年間で財政赤字は約1兆5,000億ドル削減される見込みだという。

反対票117票のうち、共和党は71票、民主党は46票だった。共和党からは、今後10年間で約5兆ドルの歳出削減を求める共和党法案(2023年4月27日記事参照)と比較して歳出削減が不十分などとする議員、民主党からは共和党に譲歩しすぎだとする議員が反対に回ったもようだ。だが、それらを除く多くの両党議員が賛成に回り、結果的に可決に必要な過半数を大きく上回った。また、議員1人で手続きを開始できる議長不信任決議により(2023年1月10日記事参照)、議事進行を遅らせるという事態も心配されていたが、これもみられなかった。

今後は、米国債などが債務不履行に陥るとされている6月5日までに審議・採決し、バイデン大統領の署名を経ての法案発効を目指すことになる。法案は上院に送られており、与野党の上院指導部は今週末までに法案採決を行いたい意向とされる(ロイター5月31日)。速やかな採決のためには、審議手続きの省略といった対応が必要になる。下院で同様の審議入り手続きが行われた際には、出席委員からは賛成7、反対6で承認されたが(ロイター5月30日)、上院の場合は、基本的に全会一致である場合が多く、下院よりもハードルが高い。審議手続きなどを省略できなければ、採決は6月6日まで遅れるとの観測もあり(「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙電子版5月31日)、法案が上院で実際に可決されるまでは、予断を許さない状況が続いている。

(宮野慶太)

(米国)

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