バイデン米政権が2024年度予算教書発表、歳出総額は前年度比8.0%増の6.9兆ドル

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月10日

米国のバイデン政権は3月9日、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の予算教書を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回は3月末に発表した前年よりも1カ月弱早い発表となった(2022年3月29日記事参照)。

2024年度予算案の総額は前年度比8.0%増の6兆8,830億ドルで、2023年度の前年度比(1.6%増)から大きく増加した。歳出は、国防費など議会の可決が必要な裁量的経費と、社会保障などの義務的経費に分かれており、うち裁量的経費は前年度比9.4%増の1兆9,000億ドルで、ウクライナ支援や中国への軍事的備えなどから大幅な増加となった。義務的経費は前年度比5.5%増の4兆1,940億ドルで、保育サービス支援や有給休暇取得支援の拡充のほか、オハイオ州での鉄道脱線事故(2023年3月1日記事参照)などを踏まえて、鉄道網の安全対策経費などを盛り込んだ。一方、利払い費は前年度比19.4%増の7,890億ドル、長期金利は前年度比マイナス0.3ポイントの3.6%を見込む。債務残高の増加により、利払い費は引き続き大きく増加することになっている。

歳入については、前年度比4.9%増の5兆360億ドルを見込む。1億ドル超の資産を保有する上位0.01%の富裕層に対して25%の最低税率を設けるほか、連邦法人税率を28%に引き上げるなど、前年度も盛り込んだ増税措置を一部強化して再び盛り込んだ。また、一般教書演説でも言及があった企業の自社株買いの課税率の1%から4%への引き上げや、年間所得40万ドル以上の高所得者の所得税最高税率引き上げ、高齢者向け公的医療保険「メディケア」の保険料率引き上げなどを盛り込んだ。他方、歳入の増加分以上に歳出がかさむため、財政赤字は前年度比17.7%増の1兆8,460億ドルとなっている。ただし、増税措置の継続などにより、財政赤字は2025年度以降縮小すると予測しており、バイデン政権は、今回の予算案により今後10年で財政赤字を3兆ドル削減できると試算している。

なお、実質成長率は2023年度0.6%、2024年度1.5%、消費者物価指数(CPI)の伸び率は2023年度4.3%、2024年度2.4%を想定している(歳出・歳入などの詳細は、添付資料表参照)。

米国では、議会が予算編成の決定権限を有しており、今回の予算案は議会審議のたたき台となる。共和党は数週間以内に独自の予算案を発表する予定で、厳しい歳出削減を盛り込むことが予想されている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版3月8日)。今回は前年と違って共和党が下院で多数派を握っているため、バイデン政権・議会民主党と共和党の調整が今後難航するのは必至だ。加えて、債務上限問題への対応(2023年2月17日記事参照)が喫緊の課題となっており、本予算への対応はずれ込む可能性がある。米国では、本予算が新年度までに成立せず、つなぎ予算で一時的に対応することが常態化しており、前年は12月にようやく本予算が成立した。つなぎ予算による一時的な対応は人的・時間的コストがかさみ、市場の混乱も生みがちだ。昨年以上に調整の難航が予想される中、バイデン政権・議会民主党が本予算を速やかにまとめられるか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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