米銀、SVB経営破綻後の週に預金1,000億ドル減少、中小から大手への預金移動進む

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月28日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が3月24日に公表した週次統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻(2023年3月13日記事参照)後の3月9日から15日にかけて、米国の銀行の預金残高は前週に比べて984億ドル減少したことがわかった。減少幅は2022年4月20日以降で最大となる。

預金のうち、普通預金など流動性の高い「そのほかの預金」は782億ドル減少と減少額の大半を占めた。特に資産残高26位以下の中小金融機関の預金残高は、1,200億ドル減少と過去最大の減少幅となった。一方で、それ以上の大手25行の預金残高は666億ドル増加しており、信用不安が生じている中小から大手への資金移動が進む。バンク・オブ・アメリカがSVB破綻後の数日で150億ドル超の預金増加があったとしていたが(2023年3月17日記事参照)、マクロ統計でもこの傾向が明らかになったかたちだ。また、銀行外への資金移動も進んでいるとみられ、米国投資信託協会(ICI)によると、3月15日の週は、8日の週から約1,209億ドルがマネーマーケットファンドの口座に流入した。こうした中小金融機関の流動性不足に対して、当局が資金供給している構造となっており、FRBや預金保険公社(FDIC)からの金融機関への融資利用残高は3月15日時点で3,181億ドルと前週比で約21倍に増加した(2023年3月20日記事参照)。これらの数値に連動するように中小金融機関の同週次統計の借入残高は2,510億ドル増加している。

こうした銀行の状況に米国民も不安を感じており、世論調査によると、一連の銀行破綻などの経済的影響を「懸念する」と回答した割合は63%となり(2023年3月27日記事参照)、今後の経済への影響が不安視されている。財務省など金融関係当局で構成される金融安定監督評議会(FSOC)は3月24日に、一部の金融機関がストレスを受けているものの、米国の銀行システムは依然として健全で回復力があるとの見解で一致したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、消費者の不安解消に躍起となっている。だが、ファースト・リパブリック銀行やパシフィック・ウェスタン銀行など中小金融機関への信用不安が続いていることに加え、海外でもクレディ・スイスに続き、ドイツ銀行にも信用不安が生じている状況だ(2023年3月28日記事参照)。信用不安前から、米銀の利益は減少傾向で、貸し出し態度の厳格化が進んでおり(2023年3月2日記事参照)、今回の一連の信用不安がこれに拍車をかけて、貸し出しやクレジットカードローンなど企業や消費者への資金供給が細る懸念もあり、当局からさらなる支援策が打ち出されるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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