米下院の中国特別委、新疆ウイグル自治区と台湾に関する政策提言を採択

(米国、中国、台湾)

ニューヨーク発

2023年05月30日

米国連邦議会下院で1月に設立した「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」(中国特別委員会)」は524日、中国新疆ウイグル自治区と台湾に関する政策提言をそれぞれ採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。中国特別委員会は立法権限を持たないが、公聴会を開催するなどして調査活動を行い、政策提言をまとめる機能を担う(2023年1月12日記事参照)。中国特別委員会が提言をまとめるのは今回が初めてとなる。

新疆ウイグル自治区に関する提言は、3月に開いたウイグル族への人権侵害をテーマとした公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づいてまとめた。中国特別委員会は提言を記した報告書で「中国共産党はウイグル族に対し、米国国務長官が認定したように人道に対する罪やジェノサイド(集団虐殺)の基準に達する残虐行為を続けている」と指摘(注1)。これに対して議会が取るべき行動として6つの提言を示した。

報告書ではまず、人権侵害に加担した人物や事業体への制裁強化を提言した。具体的には、上下各院に提出されている「ウイグル人権制裁再検討法(H.R.1324外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますS.585外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の可決を促した。同法案では、財務長官に対し、ハイクビジョン、アリババ、バイドゥ、バイトダンスなど中国のテクノロジー企業10社が新疆ウイグル自治区で人権侵害に関与しているか否かを判断し、もし関与していると決定した場合には制裁対象に指定するよう義務付けている。

新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA2022年8月5日付地域・分析レポート参照)の執行強化も求めた。現行のデミニミス・ルール(注2)を利用した中国などからの少額輸入がUFLPA執行の抜け穴となっているとして、ルールの厳格化が必要と主張した。また、UFLPAに基づく輸入禁止対象となる事業者のエンティティー・リスト(2022年8月4日記事参照)の拡充を政権に要請すべきと記した。

人権侵害に利用され得る技術分野の対中投資の制限も打ち出した。米国の大学基金やベンチャーキャピタルファンド、年金基金が自覚ないまま、中国の監視網を支える企業に投資していることを問題視し、こうした資金の流れを止めるための立法措置を求めた。提言では、そのほかに政権による外交努力の強化や、中国外にいるウイグル族の個人の保護も挙げた。

台湾に関する提言では、中国による台湾の軍事侵攻の抑止策をまとめた。台湾との安全保障面での協力に加え、中国の経済的威圧に対抗する立法措置や、中国の不公正な経済慣行に焦点を当て、台湾との幅広い通商交渉を盛り込んだ。

中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)は声明で、今回の政策提言は特別委の活動の「第一歩にすぎない」と述べ、今後も超党派で積極的に政策提言を行うことを示唆した。

(注1)米国のトランプ前政権とバイデン政権はともに、新疆ウイグル自治区でのウイグル族らへの人権侵害行為をジェノサイドと認定している(2023年3月23日記事参照)。

(注2)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)の800ドル以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。

(甲斐野裕之)

(米国、中国、台湾)

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