米USTR、ベラルーシとブルガリアを監視国に追加、知財に関するスペシャル301条報告

(米国、ベラルーシ、ブルガリア、中国)

ニューヨーク発

2023年04月27日

米国通商代表部(USTR)は4月26日、知的財産に関わるスペシャル301条報告書(2023年版)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。スペシャル301条報告書は1974年通商法182条に基づき、知財の保護や執行が不十分な国を特定し、懸念が大きい順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定している(注1)。

今回の報告で優先国に指定した国はなかった。優先監視国には前年(2022年4月28日記事参照)と同じく、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、ロシア、ベネズエラの7カ国を指定した。監視国には前年から新たにベラルーシ、ブルガリアを追加し、22カ国(注2)が並んだ。なお、2021年の報告書で優先監視国に指定していたウクライナは、2022年に続き、ロシアの侵攻を理由に評価対象外となった。

今回、監視国に追加したベラルーシは、2016年に1度、監視国から外れたが、再び指定した。コンピュータプログラムなどの著作物の権利者が同国に「非友好的な行動を取っている」として指定された外国の出身者の場合に、無許諾使用を認める法律を可決したためだ。ブルガリアについては、オンライン海賊版商品の捜査と訴追の証拠収集に関わる欠陥を問題視した。一方、同国がこの問題に対処する法律を起草し始めたことなどにも言及し、2023年に進展状況を別途評価する予定としている。

優先監視国を巡って、USTRはプレスリリースで中国を名指しし、知財の保護と執行に関して多くの深刻な懸念が残っていると指摘した。専利法の改正などが実施されているが、知財関連の改革ペースは遅くなっていると懸念を示した(注3)。強制的な技術移転や模造品など長年にわたる問題を列挙し、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)の順守状況を監視し続けると記した。USTRはこれまでも中国の知財分野の課題について、「外国貿易障壁報告書」などで繰り返し取り上げている(2023年4月5日記事参照)。

USTRは知財保護などで改善がみられた国についても報告している。例えば、タイで2022年8月に新著作権が施行されたことや、ナイジェリアが2023年3月に著作権法を採択したことなどを評価した。USTRは2022年以降、既存の貿易投資枠組み協定(TIFA)などに基づいて19カ国・地域に知財保護などの改善を働き掛けてきたと強調し、今後もこうした2カ国間関与を続けると説明した。

(注1)優先国には、米国製品に特に深刻な悪影響を与える政策や慣行を取っている国が指定され、1974年通商法301条に基づく調査の対象となる。USTRは優先国の指定を補助するため、知財の保護や執行に特定の問題がある国を優先監視国と監視国に指定している。USTRは優先監視国に1年以上指定している国に関し、当該国の問題解決を支援するための行動計画を策定するよう国内法で義務付けられている。

(注2)アルジェリア、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、グアテマラ、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム。

(注3)中国の知的財産に関する情報については、ジェトロ・ウェブページ参照。

(甲斐野裕之)

(米国、ベラルーシ、ブルガリア、中国)

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