米4月の雇用情勢は堅調、雇用逼迫の原因として労働時間の短縮にも注目

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月09日

米国の4月の雇用情勢(2023年5月8日記事参照)は引き続き堅調で、時給が前年同月比、前月比ともに上昇するなど、労働市場の逼迫が確認される内容だった。これまで、早期退職者の増加などが労働市場逼迫の原因とされてきたが、最近は労働時間の短縮も一因と指摘されている。

ブルッキングス研究所が3月17日に発表した調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、米国における2022年11月の週平均労働時間は2020年1月と比べ0.6時間減少しており、これは約240万人の労働者の不足に相当する。また、労働時間の短縮傾向はほかの調査でも指摘されている。全米経済研究所(NBER)の調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2019年から2022年にかけて、学士号の取得者が大卒未満の労働者より労働時間の減少傾向が大きく、既に労働時間が長く所得が高い労働者ほど、労働時間の減少幅が大きくなっている(2023年4月5日記事参照)。中でも、年収10万ドル以上で学位を持つ男性で、労働時間の短縮傾向が顕著だったという(ビジネスインサイダー1月31日)。これまでは、新型コロナ禍を機に早期退職者が増加したことで、労働市場からの退出者が増え、雇用が逼迫していると指摘されていた(2022年7月25日付地域・分析レポート参照)。しかし2023年以降は、既に働いている労働者の意識の変化も、労働市場を逼迫させる要因の1つと考えられている。

とはいえ最近、雇用の逼迫はピークに比べて緩和している。3月の雇用動態調査では、求人件数959万件に対して失業者数が583万9,000人で、失業者1人当たり1.64件の求人があったが、2022年12月以降は4カ月連続で低下している。失業者1人当たりの求人件数はいまだ高い水準にあるが、これまでの最高値である2022年3月の2.01件から大きく低下している。インフレとの関係では、こうした雇用市場の軟化が賃金の低下につながるかが注目されるが、雇用統計によると4月の時給は上昇している。なお、5月3日の連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の誘導目標が0.25ポイント引き上げられたが、利上げの停止は次回に議論するとされた(2023年5月8日記事参照)。利上げの停止は、インフレおよび賃金上昇の動向に大きく左右されるため、労働市場の構造変化を踏まえて賃金上昇がいつ軟化するかに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 fd295bd2170ff112