米国での有給休暇の完全消化率48%、大卒男性の労働時間は減少傾向
(米国)
ニューヨーク発
2023年04月05日
米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターが3月30日に公表した調査によると、米国の労働者のうち、与えられた有給休暇を完全に取得していると答えた人の割合は48%だった。米国は先進国の中で唯一、法定有給休暇が設定されてないなど、世界でも有給休暇が少ないことが指摘されている(2022年12月8日記事参照)。
調査は、パートタイムまたはフルタイムで勤務する5,188人の米国成人を対象とし、2月6日から12日にかけて実施された。雇用主が有給休暇を提供していると答えた労働者のうち、48%が全ての休暇を取得すると回答し、46%はそれよりも少ない日数しか取得しないと回答した。後者にその理由を尋ねたところ、「これ以上取得する必要性を感じない」(52%)、「仕事で後れをとることが心配」(49%)、「同僚の負担が増えることが申し訳ない」(43%)の3つが主な理由で、「昇進のチャンスを損ねる」(19%)、「失職のリスクがある」(16%)、「上司が休みを取ることを嫌う」(12%)などの回答も目立った。なお、労働省によると、民間部門の労働者では、5年間勤務の場合は平均15日間、10年間勤務は平均17日間、20年間勤務は平均20日間の有給休暇(病欠休暇を除く)をそれぞれ取得しているとされている。
有給休暇をあまり取りたがらない一方で、労働者の一部では労働時間短縮の動きがある。米国では、新型コロナウイルス感染拡大を期に、労働者の仕事へのモチベーションを失ういわゆる「静かな退職」の動きが起こっており、労働時間を意図的に減らすなどによって最低限の仕事しかしないことが指摘されている(2022年12月26日記事参照)。この労働時間の短縮について、全米経済研究所(NBER)の研究によると、2019年から2022年にかけては、大学で学士号を取得した者の方が大卒未満の労働者よりも労働時間の減少傾向が特に大きく、さらに、既に労働時間が長く所得が高い労働者ほど、労働時間の減少幅が大きくなっているとした。また、新型コロナ禍以降、労働者がよりワーク・ライフ・バランスを優先している可能性があるとしている。収入の高い労働者の場合、労働時間をある程度減らしても、収入を一定程度確保できると考えられる。
こうした労働時間の短縮などで、意図的に最低限の仕事しかしない動きは生産性に大きく影響し、経済全体にも影響を与え得る。一方で、有給休暇の取得が進み、ワーク・ライフ・バランスの改善が進めば、こうした動きに歯止めがかかる可能性がある。2024会計年度(2023年10月~2024年9月)予算案では、有給休暇取得支援の拡充を盛り込んでおり(2023年3月10日記事参照)、バイデン政権は有給休暇取得を後押ししていきたい考えだ。
(宮野慶太)
(米国)
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