米国務省が2022年人権報告書を発表、中国・イラン・ロシアなどへの懸念示す

(米国、中国、イラン、ロシア、日本)

米州課

2023年03月23日

米国国務省は3月20日、世界198カ国・地域の人権状況を2022年に発生した出来事を中心にとりまとめた2022年人権報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

同報告書では、中国外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについては87ページにわたって記述され、特に新疆ウイグル自治区においてウイグル族やそのほか少数民族に対する「ジェノサイド」が発生し続けていると指摘した。また、政府による検閲や情報統制、また、当局側で人権侵害をほごにする汚職がまん延しているなどと指摘した。また、イラン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについては2022年に大規模な混乱が発生したとして、75ページが充てられ、2022年9月にスカーフ着用義務に違反した疑いで「道徳警察」に拘束されていた女性が死亡したことを受けた抗議活動に対し、政権が暴力的弾圧を行ったことなどが挙げられた。さらに、ロシア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて74ページが割かれ、2022年2月にウクライナへの本格的な侵攻が開始して以降、インフラや公共施設を標的とした民間人への無差別攻撃や占領地における暴力行為など、多数の戦争犯罪や残虐行為を行っている信憑(しんぴょう)性の高い報告があると指摘した。

そのほか、同報告書の概要部分では、ミャンマー、アフガニスタン、南スーダン、シリア、キューバ、ベラルーシ、ベネズエラ、カンボジアにおける人権侵害が例示された。また、人権や労働権と民主主義は補強し合う関係にあるとした上で、バイデン政権の直近の取り組みとして、2023年3月29~30日に第2回民主主義サミット(注2)をコスタリカ、オランダ、韓国、ザンビアと共催することを挙げた。

アントニー・ブリンケン国務長官は、同報告書の発表に際する記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの冒頭で、中国の習近平国家主席がロシアを訪問していることについて触れ、和平提案に基づく停戦を求めることを予測すると述べたものの、同時に、国際刑事裁判所がロシアのプーチン大統領に逮捕状を請求した直後の中国のロシア訪問は、ロシアのウクライナ侵攻に対する責任を追及するどころか、ロシアに外交的な隠れ蓑を提供しようとしていると非難した。

なお、同報告書では、日本外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについても33ページが充てられ、前年調査に引き続き、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)へのアクセスへの障壁が指摘されたほか、障害者や国籍・人種・民族的マイノリティーなどに対する人権侵害が報告された。

(注1)2021年人権報告書は2022年4月18日記事参照

(注2)第1回民主主義サミットは2021年12月10日記事参照

(葛西泰介)

(米国、中国、イラン、ロシア、日本)

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