4月の米消費者物価、前年同月比4.9%上昇、コア指数5.5%上昇で伸び鈍化、前月比では加速
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月11日
米国労働省が5月10日に発表した4月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比4.9%上昇と、前月の5.0%上昇から減速し、民間予想の5.0%上昇も下回った(添付資料図参照)。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同5.5%上昇で、前月の5.6%上昇から減速、民間予想と一致した。前月比ではCPI、コア指数ともに0.4%上昇(CPIは前月0.1%上昇、コア指数は前月0.4%上昇)し、両指数とも民間予想と一致した。
品目別に前年同月比で見ると、ガソリンは12.2%低下(前月17.4%低下)と引き続き低下したが、前月比では3.0%上昇した。食料品は7.7%上昇(前月8.5%上昇)と伸びが8カ月連続で鈍化し、特に2月から3カ月連続で0.5ポイント以上の低下幅が続く。内訳では、家庭用食品は1.3ポイント伸びが鈍化したが、外食は0.2ポイントの鈍化だった。財は2.0%上昇(前月1.5%上昇)と前月に続き伸びが加速し、前月比でも0.6%上昇だった。うち中古車は6.6%低下(前月11.2%低下)と6カ月連続で低下したが、前月比では4.4%上昇と2022年6月以来の上昇となった。新車は5.4%上昇と前月(6.1%上昇)から伸びが鈍化、前月比でも0.2%低下した。サービスは6.8%上昇(前月7.1%上昇)と前月に続き伸びが鈍化した。物価全体の約3割のウエートを占める住居費は8.1%上昇(前月8.2%上昇)と伸びが鈍化した。住居費の伸びが鈍化するのは2021年2月以来。その他、医療サービスは0.4%上昇(前月1.0%上昇)したが伸びが鈍化し、航空運賃は0.9%低下(前月17.7%上昇)と減少に転じた(添付資料表参照)。
4月のCPIの伸びは小幅に鈍化したが、それでも約5%の上昇で、特にコア指数でみれば5.5%上昇だった。一方で、4月の雇用統計では、賃金・時給の伸びが4.4%となっており、賃金上昇よりも物価上昇の伸びが高い(2023年5月8日記事参照)。2023年第1四半期(1~3月)のフルタイム労働者の週間賃金の中央値が前年同期比6.1%上昇と、同期間中のインフレ率の5.8%上昇を上回ったが(2023年4月21日記事参照)、これまで続いている賃金以上のインフレによる実質所得の目減りが購買力の低下をもたらしている。新型コロナ禍での消費抑制や政府からの現金給付によって、余剰貯蓄はピーク時には2兆3,000億ドルあった(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)。
サンフランシスコ地区連邦準備銀行は、2023年3月時点でこの余剰貯蓄が約5,000億ドルまで減少したものの、2023年中は残りの余剰貯蓄が消費を支えると予測している。2023年第1四半期の実質GDP成長率は大幅に鈍化した一方で、個人消費は堅調さを保っている(2023年4月28日記事参照)。長引く高インフレに加え、銀行が貸し出し態度を厳格化させていることから、企業や個人の融資需要が減退しているが(2023年5月9日記事参照)、設備投資や住宅投資の先行きが暗い中では、この余剰貯蓄が堅調さを保つ消費の源泉となっていると考えられる。余剰貯蓄が尽きるまでにインフレを賃金上昇以下に抑え、消費を減速させることなく、経済を軟着陸させることができるか、当局の動向に注目が集まる。
(宮野慶太)
(米国)
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