米国、求職者が求める留保賃金が過去最高更新、賃金上昇がインフレを上回る

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月21日

米国ニューヨーク連邦準備銀行(NYFED)は4月17日、求職者が就職してもよいと考える賃金水準(留保賃金)は年収で7万5,811ドルとする調査を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。前回11月調査(2022年12月26日記事参照)から2.9%増加し、2014年3月の調査開始以来の最高値を更新した。

今回3月実施の調査結果によると、男性の留保賃金が8万8,883ドルで前回から3.7%上昇し、女性は6万3,069ドルで2.3%上昇し、男女共に伸びた。学歴別では、大卒以上の留保賃金は9万7,270ドルで5.6%上昇したのに対して、大卒未満では5万9,683ドルと0.3%減少した。年齢別では、45歳以下は7万8,731ドルで0.8%減少したのに対し、45歳超では7万3,069ドルで6.2%上昇と大幅に上昇した。また、過去4週間に仕事を探したことがあると回答した割合は22.0%と、前回11月の18.8%より大きく上昇した。62歳を超えて働く可能性があると回答した割合について、前々回は統計開始以来最低の48.8%となったが(2022年8月31日記事参照)、今回はそれを更新し48.1%となり、67歳を超えても働くと回答した割合も31.0%と前回(31.5%)から低下した。

これまでと同様に、留保賃金の上昇がみられた今回の結果は、雇用される労働者が強気であることの表れで、需給が逼迫する労働市場の裏返しともいえる。他方、過去4週間に仕事を探したことがあると回答した割合が今回は上昇するなど、軟化の傾向も一部でみられ始めている。実際の雇用動向でも、2023年2月の非農業部門の求人件数は993万1,000件と2021年5月以来の水準にまで減少している(2023年4月13日記事参照)。加えて、労働統計局が4月18日に公表したデータでは、2023年第1四半期のフルタイム労働者の週間賃金の中央値が前年同期比6.1%上昇と、同期間中のインフレ率の5.8%上昇を上回り、長らく続くインフレが賃金上昇を上回る状況に解消の兆しが見られ始める。これは消費者の購買力を高め、米国経済にとっては追い風となる。ただし今後は、シリコンバレー銀行などの経営破綻をきっかけとして、銀行の貸し出し態度の悪化および企業の資金繰りの悪化による雇用鈍化または削減が進む可能性が懸念されている。留保賃金含めて賃金の動向は金融政策に大きく影響を与えることから、今後の動向を引き続き注視する必要がある。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 5fa87188b701b826