米FRB、政策金利を2会合連続で0.25ポイント引き上げ、金利到達点の見通しは5.1%で変更なし

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月23日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月21、22日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現状の4.5~4.75%から0.25ポイント引き上げ、4.75~5.0%とすることを決定した(添付資料図参照)。ジェローム・パウエルFRB議長は、2月の消費者物価指数(CPI)上昇率が3月14日に発表された段階では、堅調な雇用や物価の高止まりを踏まえ、引き上げ幅を0.5ポイントへと拡大することも示唆していた(2023年3月15日記事参照)。しかし、その後のシリコンバレー銀行(SVB)などの経営破綻による信用不安を踏まえ(2023年3月13日記事3月14日記事参照)、「利上げ停止も議論した」が、結果的には前回と同じく、通常どおりの引き上げ幅となった。決定は参加者11人の全会一致だった。

声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおける主な変更・追加点として、最近の物価高止まりを踏まえ、前回あった「インフレ率は幾分鈍化しているが」との文言が削除された。また、ロシアによるウクライナ侵攻に関する記述が削除され、代わって最近の銀行システムの信用不安について「銀行システムは健全で弾力的」「最近の動向は、家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動、雇用、インフレに影響を及ぼすと思われるが、これらの影響の程度はまだ不確実」とした。加えて、「入ってくる情報を注視し、金融政策への影響を評価」し、インフレ率を長期的に2%に戻すために「いくらかの追加の金融引き締めが適切になるかもしれないと予想している」として、前回までの「目標レンジの継続的な引き上げが適切だと予想している」との表現を修正し、利上げが最終局面にあることを示唆した。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含めFOMC参加者17人による中長期見通しも示された。2023年の実質成長率は前回(2022年12月)の0.5%から0.4%に下方改定され、インフレ率(コアCPE)は前回3.5%から2023年3.6%に上方改定された。他方、FF金利水準のピークは2023年末に5.1%と前回から変更されておらず、あと0.25ポイントの引き上げが行われる計算になる。金利引き下げが始まるのは2024年からで、同年末時に4.3%(前回4.1%)、2025年末は3.1%(前回と同じ)を見込む。前回12月時点と同じく、景気に中立的な均衡金利2.5%を上回る水準が長期間続くと予想されている(添付資料表参照)。

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、SVBなどの経営破綻による銀行セクターへの信用不安を踏まえ、冒頭に銀行に対する緊急の短期融資措置(BTFP)などを紹介した上で、信用不安解消のため断固とした措置を取っており米国の銀行システムは十分な資本と流動性を有していることを強調した。また、景気の現状について、2022年の実質成長率は0.9%とトレンドを下回っており、FOMC参加者の大部分は今後の成長に下方リスクがあると見込んでいるとした。特に個人消費については、最近回復しているものの、一部は暖冬の影響を受けている可能性があるとした。一方で、雇用は引き続きタイトで、インフレは2022年から圧力が幾分緩やかになってきているが、最近の物価の強さはインフレ圧力が引き続き高いことを示しているとした。また、前回の会合以降の指標は予想以上の強さだったという認識を示し、記者とのやり取りで「参加者は年内の利下げを想定していない」と述べ、金融システム不安を踏まえ、年内の利下げを見込む一部観測を否定した。また、声明文で利上げが最終局面にあることが示唆されたが、これについてパウエル議長は「『継続的』から『追加』の引き上げがあり得るという文面へとガイダンスを変更した」と述べて、必要に応じ、まだ利上げをする用意があることを強調した。

(宮野慶太)

(米国)

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