住友商事、DAC技術有する米グローバル・サーモスタットに出資しCCUS分野で共同事業開発へ

(米国、日本、欧州、中東、アジア)

ヒューストン発

2023年05月31日

住友商事は5月30日、米国子会社を通じて、二酸化炭素(CO2)の直接大気分離回収(DAC)技術を保有する米国のグローバル・サーモスタット(本社:コロラド州コマース・シティー、以下GT)に出資するとともに、同社技術を活用したCO2回収・利用・貯留(CCUS)分野での共同事業開発に関する基本合意書を締結したと発表した。

発表によると、GTは独自の固体吸着材やハニカム状(注1)の基材を用いて効率的なCO2吸着を実現することで、CO2回収コストの低減に取り組んでいる。2022年末に年間1,000トン超のCO2を回収する商用規模のDAC設備の稼働に成功し、今後、米国を中心に世界展開を進めていくとしている。

両社は、住友商事が持つグローバルネットワークとGTの先進的なDAC技術を組み合わせることで、米国をはじめ欧州・中東・アジアといった地域において、DACCS(注2)やDACM(注3)によるカーボンクレジット創出に取り組むほか、CO2を資源として利用する合成燃料(e-fuel)生産などのCCUS分野での共同事業開発を行うとしている。DACを早期に実用化させることによりCCUSバリューチェーンの構築を加速させ、カーボンニュートラル社会の実現を目指す方針だ。

住友商事は米国で脱炭素化の取り組みを進めており、2月に米国エムピーマテリアルズと電気自動車(EV)や風力発電用モーターなどの先端産業に欠かせないレアアースの日本向け独占販売代理店契約の締結(2023年2月22日記事参照)、3月には米国で船舶向けアンモニア燃料供給の検討開始(2023年4月6日記事参照)、4月にはディーゼルエンジンの燃費改善・CO2排出量削減に向け米国スタートアップの水素技術活用(2023年4月17日記事参照)をそれぞれ発表している。

(注1)蜂の巣のように、中空の六角柱を隙間なく並べた形状。

(注2)Direct Air Carbon Capture and Storageの略称。DACとCO2回収・貯留(CCS)を組み合わせた名称で、大気中からCO2を永続的に除去し、CO2の排出量をマイナスにする仕組み。

(注3)Direct Air Capture with Mineralizationの略称。CO2を地下に貯留するCCSの代わりにCO2を水に溶解させ岩石に注入、鉱物化(Mineralization)をおこなうことで、CO2を除去しCO2排出量をマイナスにする仕組み。

(沖本憲司)

(米国、日本、欧州、中東、アジア)

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