米ニューヨーク州議会、新築建物でガスの使用を禁じる法案を可決、ニューヨーク市への影響は限定的

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月10日

米国ニューヨーク(NY)州議会で5月2日、新築の建物でガス使用を禁じる法案が、2024会計年度予算案(2023年2月7日記事参照、2023年4月~2024年3月、注)に盛り込まれるかたちで可決された。今後、キャシー・ホークル知事(民主党)が署名し、成立する見通し。州レベルで同種の法律が成立するのは全米初という。

NY州では、2019年に成立した「気候リーダーシップと地域社会の保護に関する法律」に基づき、2030年までに電力の70%を再生可能エネルギー電源由来とし、温暖効果ガス(GHG)の排出量を1990年比で40%削減することを目指している。今回の法案による電力シフトの促進はこうした動きと連動し、GHGの排出量削減を企図するものだ。特にNY州では、2019年時点で、建物部門のGHG排出量が全体に占める割合は32%と、輸送部門(29%)を抑え最もシェアが大きく、対策が急務となっている。

各種報道によれば、法案では、7階建て以下のほとんどの新築建物で2026年、8階建て以上の新築建物で2029年にガス使用を禁じるとしており、暖房や給湯、調理などにガスが使えなくなる。すなわち事実上、電気の代替使用が課されることとなる。ただし、既存建物でのガス使用は引き続き認められるほか、病院や製造業、非常用電源など一部の除外対象も設けられている。

なお、NY市では、すでに同種の法律が成立しており(6階建て以下の新築建物で2024年1月以降、7階建て以上の新築建物で2027年7月以降ガス使用を禁じる、2021年12月22日記事参照)、NY市に限れば法案成立の影響は限定的となる見通しだ。

そのほか、2024年会計年度予算案には、NY市やロングアイランド、ウェストチェスター郡などで、2026年までに最低賃金(時給)を15ドルから17ドルに引き上げる措置が盛り込まれた。一部では21.25ドルまで引き上げる法案を提出する動きもあったが(2022年12月7日記事参照)、控えめな引き上げ幅にとどまった。

(注)NY州の予算の会計年度は、連邦政府と異なり、4月から翌年3月の期間を対象としている。また、締めの年月が属する暦年で年度を呼ぶ。

(宮野慶太)

(米国)

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