生活費が高い都市でNYは世界1位に、州議会では一部地域で約40%の最低賃金引き上げを提案

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月07日

英国エコノミスト誌の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が12月1日に発表した「世界生活費調査2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、米国のニューヨーク(NY)がシンガポールと並んで世界で最も生活費が高い都市にランクインした。駐在員が住みやすい都市としてNYが50都市中16位にランクインした「エクスパット・シティー・ランキング2022」の中でも、生活費の高さを指摘する声が多くあったが(2022年12月2日記事参照)、今回の調査でもこれが裏付けられたかたちだ。

同調査は年2回実施され、6月と12月に公表される。今回の調査は8月16日から9月16日にかけて実施、世界172都市の200以上の製品・サービスについて、400あまりの個別品目の価格を比較している。

調査結果によると、世界的なインフレにより、調査対象都市の品目価格は現地通貨ベースで平均8.1%上昇している。また、連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金融引き締めで米国内の金利が上昇し、ドル高が進んだことにより、国際比較した米国における品目の価格が相対的に上昇したと評価している。NYおよびその周辺地域の2022年各月における消費者物価指数(CPI)は、前年同期比5~6%台の上昇率で推移しており、相対的にみれば緩やかな水準にとどまっているが、ドル高が順位の上昇に大きく影響した。またNY以外でも、調査対象となった米国の22都市すべてが、急激な物価上昇やドル高の影響で前回調査より順位を上げ、そのうち6都市(注)は、前回調査から順位が最も上昇した10都市に含まれている。これに対して、相対的に低いインフレ率や円安の進行などの影響から、東京は13位から37位、大阪は10位から43位へとそれぞれ大きく順位を下げた。

高インフレに苦しむNYの労働者を前に、NY州議会ではNY市、ロングアイランド、およびウェストチェスター郡の最低賃金を2027年にかけて時給15ドルから21.25ドルへと引き上げる法案が提出されている(「オーバーン・パブ」紙電子版12月4日)。仮に実現すれば40%以上の最低賃金引き上げとなり、労働者の家計は改善すると予想されるが、企業にとっては大きなコスト増となる。賃金上昇が商品価格に転嫁された場合は、インフレを加速させる可能性も懸念される。2022年11月にはタクシー運転手の賃金引き上げのためタクシー運賃が23%引き上げられることが決定されるなど(2022年11圧22日記事参照)、NY市では最低賃金引き上げの動きが徐々に高まっており、今後のNY市の賃金引き上げの動向に注目が集まる。

(注)ジョージア州アトランタ、ノースカロライナ州シャーロット、インディアナ州インディアナポリス、カリフォルニア州サンディエゴ、オレゴン州ポートランド、マサチューセッツ州ボストンの6都市。

(宮野慶太)

(米国)

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