ニューヨーク市議会で、新築建物での天然ガス使用を禁じる法案が通過

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月22日

米国ニューヨーク市議会で12月15日、新たな建築物での天然ガス使用を禁じる法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが通過した。近く、ビル・デブラシオ市長が署名して成立となる見通し。

法案では、7階建て未満の新たな建築物は2024年1月以降、7階建て以上は2027年7月以降の天然ガス使用を禁じており、暖房や給湯、調理などにガスが使えなくなり、事実上、電気の代替使用が課されることとなる。なお、住宅用建物(建物の50%以上が住戸用途)や業務用厨房(ちゅうぼう)、コインランドリーなど一部に除外対象も設けられている。

ニューヨーク州では、2019年に成立した「気候リーダーシップと地域社会の保護に関する法律」により、2030年までに同州の電力源の70%を再生可能エネルギー由来とすることを目指しており、今回の法案による電力シフトの促進はこうした動きと連携し、温暖化効果ガス(GHG)の削減を企図するものとなっている。米国民間調査会社のロッキーマウンテン研究所によれば、この法案により2040年までに約210万トンの二酸化炭素排出を削減することができ、これは自動車45万台の年間排出量に相当するという。

米国エネルギー情報局によると、ニューヨーク州の天然ガス消費量は2019年時点で国内6番目で、特にニューヨーク市は全米最大となる約880万人の人口を有し、同州のエネルギー消費の大部分を占める。これまでに同様の規制を導入した最も人口の多い都市は、約100万人の住民を有するカリフォルニア州サンノゼで(ロイター12月12日)、ニューヨーク市が今回追随したことで、同様の動きが他都市でも今後広がる可能性もある。デブラシオ市長は法案通過を受け、「米国最大の都市において、ガスの使用を禁ずるこの重要措置を講じることができるのであれば、どの都市でも同じことができる」と述べた(コースハウスニュース12月15日)。

一方で、関係する業界団体からは、今後のコスト増に対する懸念などの声や反対が相次いだ。ニューヨーク不動産協会は、法案通過前に声明で「今回の提案は(中略)住宅所有者と賃借人のコストを大幅に増加させる」と述べた。また、米国石油協会は法案ヒアリングの中で、法案による電力シフトが既存電力網の信頼性を脅かすことを理由に反対を表明した(グリスト12月15日)。

(宮野慶太)

(米国)

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