メキシコへの郷里送金、過去最高の585億ドルに、米国からが95%超

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年02月07日

メキシコ中央銀行は2月1日、2022年12月の出稼ぎ労働者・移民などによる本国宛て送金(郷里送金)額を発表した。2022年1~12月の外国からメキシコへの郷里送金額は584億9,743万600ドルで、年間合計額としては過去最高を記録した(添付資料図参照)。2021年の郷里送金額は515億8,586万7,100ドル、2022年はそれを13.4%も上回った。郷里送金は2014年以降9年連続で増加している。要因として、米国の最低賃金引き上げや雇用環境の安定で、移民が仕事を確保しやすい状況だったことが挙げられる。

2022年の送金回数は1億4,996万回で、そのうち米国からの送金が95.5%と大半を占めている。米国の州ごとのメキシコへの郷里送金額では、カリフォルニア州が184億3,166万ドルで全体の約32%を占め、次いでテキサス州が84億1,927万ドル(同14%)、3位はミネソタ州で47億831万ドル(同8%)となっており、3州のみで全体の50%を超える。また、メキシコ各州の送金受取額は、上位3州が50億ドルを超え、ハリスコ州が54億250万ドルで最も多く、ミチョアカン州で52億8,585万ドル、グアナファト州が50億5,880万ドルとなっている。2022年の郷里送金について1回当たりの送金額を見ると、平均390ドルと少額であり、前年比で3%しか増加しておらず、小口送金が主流となっている。

増加し続ける郷里送金の先行きは不透明

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は郷里送金について「政府の福祉プログラムと送金は、国内消費の冷え込みを抑えることに貢献しており、国民が最低限度の生活ができることに役立っている」と記者会見で発言した。しかし、IMFのチーフエコノミストのピエール・オリビエ・グランシャ氏は記者会見で「メキシコでは送金が経済成長の原動力になるほどの重みは持っていない」と説明し、「送金はGDPの4%を占めているのみで、メキシコの家族が堅実で健康的な収入を得るには、唯一、構造改革が可能な健全な経済成長に基づいて、国内雇用を創出していくことが求められる」と語った(「エル・エコノミスタ」紙2月1日)。また、1月のラテンアメリカ通貨研究センターのレポートでは、米国での移民の雇用統計が発表され、雇用者数は2021年第2四半期(4~6月)から伸びてきたが、2022年第4四半期(10~12月)が前月比で10万2,301人減少したことを伝えた。失業率増加を免れない米国連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ抑制策や米国の景気後退の声が聞こえる中で、移民の雇用が不安定になっており、AMLO大統領が発言した現状がいつまで続くかは不透明だ。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

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