拡大するデジタル関連規制を警戒、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(中国編)

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年04月05日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)で、中国に関して、前年(2022年4月6日記事参照)と同様、NTEで設定した全14分野(注)に加え、貿易協定と国家主導の非市場的貿易体制も取り上げた。なお、中国に関する記述は、国・地域別で最も多い41ページを充てた。

USTRは、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)を巡り、中国は合意を十分に順守していないとの認識を示し、同協定が中国の国家主導の非市場的貿易体制の根本的な変化にはつながっていないと総括した。その非市場的貿易体制については、中国が外国の事業者に対する市場アクセスを制限する一方、「中国製造2025」に代表される産業計画の下で政府が国内企業に資金や規制面での支援を提供していると指摘した。USTRは、これまでも中国の不公正な貿易慣行に強い警戒感を示しており、NTEでもその見方を堅持した(2023年2月28日記事参照)。

貿易の技術的障壁と衛生植物検疫(SPS)措置に関しては、前年のNTEでも触れた「中国輸入食品海外製造企業登録管理規定」(2021年5月24日記事参照)と「中国輸出入食品安全管理弁法」(2021年5月24日記事参照)を引き続き問題視した。2023年7月1日までに特定の外国の食品製造業者に製造に関する追加的な情報を提出させ、外国の規制当局にそれを認証するよう求めるルールが導入されることに対し、事業者と輸出元国の規制当局にとって新たな負担になると懸念を示した。

知的財産保護では、中国の法執行体制がいまだ不十分として、2022年4月に公表した知的財産に関わるスペシャル301条報告書で中国を「優先監視国」に再指定したと記述した(2022年4月28日記事参照)。加えて、2022年の調査で、中国の複数のオンライン・物理的市場が模造品や海賊版商品・サービスの販売に関わっていることを特定したと説明した(2023年2月1日記事参照)。

デジタル貿易と電子商取引に対する障壁では、データセキュリティー法などの関連法令のほか、2022年9月に施行された「データ域外移転安全評価弁法」(2022年10月25日記事参照)を含む実施規則が、企業によるデータの越境移転を制限していると報告した。2022年9月に公表されたサイバーセキュリティー法の改正草案が、必要な審査を受けていない重要情報インフラの運用業者に罰則を科す内容になっていることにも言及。こうした措置が、外国製品の中国製品への置き換えを促していると批判した。

(注)輸入政策、貿易の技術的障壁、衛生植物検疫(SPS)措置、政府調達、知的財産保護、サービス分野の障壁、デジタル貿易と電子商取引、投資障壁、補助金、非競争的慣行、国有企業、労働、環境、その他の障壁。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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