米USTR、中国特許法に懸念、スペシャル301条報告

(米国、サウジアラビア、クウェート、ルーマニア、レバノン、中国)

ニューヨーク発

2022年04月28日

米国通商代表部(USTR)は4月27日、知的財産に関わるスペシャル301条報告書(2022年版)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。スペシャル301条報告書は、1974年通商法182条に基づき、知財保護が不十分な国、または知財保護に依拠する米国企業などに対して公正な市場アクセスを与えていない国を特定し、懸念が大きい順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定している(注1)。

今回の報告で優先国に指定した国はなく、優先監視国には7カ国(前年9カ国)、監視国には20カ国(23カ国)を指定した(注2)。前年の報告書(2021年5月6日記事参照)で優先監視国だったサウジアラビアは指定を外れた。サウジアラビア知的財産総局(SAIP)が知財の執行手続きを公表し、知財執行に特化した裁判所を設置したことを評価した。同じく前年の報告書で優先監視国のウクライナは、ロシアの侵攻により審査を一時停止し、今回は評価対象外となった。

監視国については、クウェート、ルーマニア、レバノンが指定を外れた。クウェートは商工省(MOCI)と著作権庁がオンラインポータルをつくり、商標と著作権の侵害を報告する手続きを簡素化したことなどが背景にある。ルーマニアは2022年1月に知財に関わる国家戦略策定や省庁間の取り組みを調整する知財執行調整官を任命したことなどが知財保護・執行に寄与するとした。レバノンに関しては、評価期間中に利害関係者から重大な懸念が示されなかったとしている。

一方、優先監視国の中国について、USTRは、2021年に特許法(専利法)の改正、著作権法、刑法修正案が施行された一方、権利保持者がこれらの措置の十分性と効果的な実施に懸念を抱いていると指摘した(注3)。また、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)で中国が約束した強制的な技術移転の禁止などの履行状況については、今後も評価すると記述した。

(注1)優先国については、1974年通商法301条に基づく調査の対象となる。

(注2)優先監視国は、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、ロシア、ベネズエラ。監視国は、アルジェリア、バルバドス、ボリビア、ブラジル、カナダ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、グアテマラ、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム。

(注3)中国の知的財産に関する情報については、ジェトロ・ウェブページ参照。

(甲斐野裕之)

(米国、サウジアラビア、クウェート、ルーマニア、レバノン、中国)

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