米USTR、中国の不公正貿易慣行に対しWTOに依存しない対抗策も追求

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年02月28日

米国通商代表部(USTR)は2月24日、2022年の中国によるWTO協定順守に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この報告書は、2001年の中国のWTO加盟以降、米国の国内法で連邦議会への提出が毎年義務付けられているもので、報告書の公表は今回で21回目となる。2022年の報告書は、(1)中国のWTO加盟国としての評価、(2)米国の対中通商政策、(3)中国の不公正貿易慣行の具体例の3部で構成されている。

USTRは中国について、前年の報告書(2022年2月17日記事参照)の公表時から変わらず、WTOルールの順守が不十分と結論づけた。中国の国家主導で非市場的な経済・貿易慣行はますます増大しており、それが生む重商主義が米国やそのほかのWTO加盟国の労働者と企業に損害をもたらしていると批判した。とりわけ、国内産業への大規模な補助金や技術移転の強要、主要産業における過剰な生産能力など根本的な構造的課題が対処されていないと指摘した。

USTRは、WTOの紛争解決手続きについて、中国のようなWTOの根本原則と対立するような国の貿易システムに対処するには不十分と言及した。その上で、中国の不公正な貿易慣行に対処するためには、WTOに依存しない解決策を含む新たな戦略が必要と主張した。具体的には、戦略的な国内投資の追求に加え、中国への2国間関与、貿易協定の執行、米国の貿易関連法令の活用、同盟・パートナー国との緊密な連携を挙げた。

これらの具体策のうち、国内投資に関しては、2021~2022年に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)、インフレ削減法、インフラ投資雇用法により、米国の経済やサプライチェーン、インフラを強化すると記した。米国の貿易関連法令を巡っては、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)による成果が限定的であることに鑑み、1974年通商法301条に基づいて中国原産の輸入品に課している追加関税(301条関税)に大きな変更は加えていないと説明した。一方、301条関税により「米中間に壁を築くつもりはない。たとえそれが可能であっても、中国がもたらす問題に対処することにならない」とも明記した。USTRは301条関税の見直しに着手しているが、これまで具体的な見直し結果は明らかにされていない(2022年10月13日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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