送金促進の新たな動きみられる郷里送金、前年同月比で増加傾向

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年04月27日

バングラデシュへの郷里送金は、前年比で回復基調が続いている。同国では2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)に過去最高額(247億ドル)の同送金を記録したものの、2021/2022年度は新型コロナウイルスの影響により、中東や欧州など受け入れ先国で自国民の雇用を優先する動きや、労働市場の供給過多による受け入れの滞りもみられ(2022年2月9日記事参照)、210億ドルまで減少していた。2022/2023年度は11月から増加傾向に転じ(2023年1月12日記事参照)、3月単月の送金額は2022年8月以来7カ月ぶりとなる20億ドルに達したと報じられている(「ビジネス・スタンダード」紙4月2日)。バングラデシュ中央銀行(BB)によると、2022/2023年度の2022年7月~2023年2月の累計送金額は約140億ドルに達し、前年同期比で4.3%増となっている(添付資料表1参照)。

郷里送金額が増加している背景として、市中銀行の一部で同送金に際して1ドル最大117タカ(約145円、1タカ=約1.24円)程度の高いレートが用いられていることや(「ビジネス・スタンダード」紙4月2日)、政府が継続している送金額の2.5%相当の現金インセンティブの付与(2022年1月5日記事参照)に加えて、2022年12月に発表された同送金に係るモバイル金融サービス(MFS)向けの規制緩和(2022年12月7日記事参照)が挙げられる。

例えば、郷里送金の公式チャンネルの1つであるビー・キャッシュ(bKash)はこの規制緩和を受け、米国発MFSプラットフォームで、国外24カ国を中心に500万人以上のユーザーを有するペイオニア(Payoneer)との提携の下、bKashユーザーを対象としたPayoneerアカウントの簡易作成や、自身のPayoneerアカウントからbKashアカウントへの1日当たり最大12万5,000タカの資金移動を可能としている。また、米国系の同ウエスタン・ユニオン(Western Union)の国外アカウントからbKashアカウントへの入金に際し、バングラデシュ政府が1,000タカごとに25タカのインセンティブを付与し、さらに、bKashが1万タカ以上の入金時に100タカを追加付与(月1回を上限)する制度が2023年2月9日から4月30日までのキャンペーンとして運用されている。

一方で、3月末の外貨準備高は311億4,270万ドルと、減少傾向が続いている。バングラデシュではL/C決済の抑制措置(2022年7月19日記事参照)が講じられる中、外貨準備高は直近2月単月の輸入額(47億ドル)からみれば、約6.5カ月分の水準となるが、2022/2023年度外貨準備高は前月比で減少傾向が続いている(添付資料表2参照)。

地場銀行大手のユナイテッド・コマーシャル・バンク(UCB)でマネーロンダリング対策部門の責任者を務めるコンドカル・ムスタク・アーメッド氏はジェトロのインタビューに対し、「当行は中東や欧州で就業しているバングラデシュ人顧客に対し、SNSを通じて個別に直接、当行を通じた(公式チャンネルによる)郷里送金を促す働きかけを強化しており、良い反応を得られている。直近の統計の回復傾向は当行の認識と同様に、ポジティブに捉えている。他方、違法な送金(注)に際して適用する為替レートが各市中銀行のレートよりも良いことが引き続き大きな課題で、郷里送金は統計に反映されていない部分も依然として大きいとみている」と話している(4月16日)。

(注)「カーブ・マーケット(Kerb Market)」や「地下送金」、現地語では「フンディ(Hundi)」と呼ばれる。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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