米エネルギー省、原発支援プログラム第2次募集の受け付け開始を発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年03月06日
米国エネルギー省(DOE)は3月2日、インフラ投資雇用法で措置されている総額60億ドルの老朽原子力発電所への資金援助支援プログラム(2022年4月27日記事参照)について、第2次募集の受け付け開始を発表した。同プログラムの第1次募集では、2022年11月にカリフォルニア州で唯一稼働しているディアブロキャニオン原発に最大11億ドルの助成を決定している(2022年11月22日記事参照)。
今回の募集対象は、同支援プログラムの対象期間の2022年から2026年の間に、経営上の問題などで閉鎖のリスクがある原発としており、第1次募集時のように閉鎖を既に表明した原発に限定されない。加えて、2021年11月15日以降に操業を停止した原発も今回の対象としており、第1次募集より幅広い原発が対象となっている。なお、申請期限は5月末までとなっている。
DOEによると、エネルギー市場の変化やそのほかの経済的要因によって過去10年間で13基の原子炉が予定より早期に閉鎖しているが、原発の閉鎖は大気汚染物質と二酸化炭素(CO2)排出量の増加につながり、その結果、周辺地域の大気の質が低下したという。DOEのジェニファー・グランホルム長官は「資金援助の範囲を(今回)拡大することで、より多くの原子力施設が安価でクリーン、かつ信頼性の高い電力の恩恵を受ける地域社会の経済的な牽引役として、操業を継続する機会を得ることができる」と述べている。
米国で原子力発電は電源全体の約18%と、天然ガス、石炭、再生可能エネルギーに次ぐ電力源で、再エネと原子力を合わせたクリーンエネルギーに占める原子力発電の割合は約半分を占める。加えて、バイデン政権は2030年までに2005年比で温室効果ガス(GHG)の50~52%削減、2050年にカーボンニュートラルを国際公約に掲げているが、新型コロナ禍からの経済回復から2年連続でGHG排出量は増加しており(2023年1月12日記事参照)、脱炭素目標達成の観点から、発電時にCO2を排出しない原子力発電は重要な電源となっている。インフレ削減法でも、既存の原子力発電所を維持するための投資税額控除が盛り込まれていることから(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)、今後も米国で原発の運転延長の動きは続きそうだ。
(宮野慶太)
(米国)
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