米国2022年GHG排出量は前年比1.3%増、パリ協定目標からさらに遠のく、米民間調査会社試算

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月12日

米国民間調査会社のロジウム・グループは1月10日、米国の2022年の温室効果ガス(GHG)排出量が前年比1.3%増加したとの試算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年は、新型コロナ禍からの経済再開による反動で、6.2%増と大きく増加していた(2022年1月17日記事参照)。2022年の伸び率は前年より鈍化したものの、2年連続の増加となった。

部門別のGHG排出量の動向をみると、家庭での暖房使用によりエネルギー消費量が増加したことが影響して、建物部門で前年比6%増と全部門の中で最も大きく伸びた。米国のGHG排出量の約3分の2を占める輸送部門と産業部門は、それぞれ1.3%、1.5%とわずかに増加した。輸送部門については、航空の旅客利用再開によるジェット燃料の需要増加が影響した。総排出量の約3割を占める電力部門は、石炭火力発電の減少が進んだことから、1%減と全4部門の中で唯一減少した。

バイデン政権は2030年までにGHG排出量を2005年比50~52%削減する目標を国際公約にしているが(2021年4月23日記事参照)、ロジウム・グループの試算によると、2022年は2005年比15.5%減と、その減少幅は2021年(2005年比17.4%減)から縮まり、目標達成はさらに遠ざかった。2022年8月に成立したインフレ削減法には多くの気候変動対策が盛り込まれており(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)、ロジウム・グループは、早ければ2023年中にGHG排出量への効果が表れ始め、2025年までにはその進展が加速すると予想する一方、上述の目標達成にはさらに積極的な政策が必要としている。

輸送部門については、2021年も排出量が10%増加しており、全部門の中で最も排出量が多いにもかかわらず、その削減は進んでいない。こうした状況なども踏まえて、バイデン政権は2023年1月10日、「輸送の脱炭素化に関する米国の青写真」という戦略計画を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。計画はエネルギー省、運輸省、住宅都市開発省および環境保護庁による省庁横断の取り組みで、インフラ投資雇用法(2021年11月9日記事参照)とインフレ削減法に基づき作成された。計画では、2050年までに輸送部門からのGHG排出をすべて削減する目標が掲げられており、この計画などにより、遅れている輸送部門のGHG排出削減が進むか、注目される。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 8ca4babc5fe3bda6