プーチン大統領の年次教書演説、経済面でも非友好国と距離置く姿勢強調

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2023年03月09日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月21日、年次教書演説を行った。西側諸国との間のウクライナを巡る情勢認識や歴史認識などの差異を強調し、戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を表明するなど、国際関係や安全保障面で西側諸国との対決姿勢を強調した。経済関連でも、西側諸国とは距離を置き、それ以外の国々との関係強化を図る姿勢を明確にした。

経済情勢認識では、2022年の実質GDP成長率はマイナス2.1%(2023年3月6日記事参照)と、ウクライナ侵攻当初の落ち込み予想を大きく下回ったと強調。ロシアの金融システムは安定的に推移し、労働市場も安定的、国内向け必需品の供給も滞りはないと述べた。穀物輸出の大幅な増加についても触れ、全般的に制裁で予想された危機は乗り越えたとの自信を示した。

その背景として同大統領は、ロシアに経済制裁を科す「非友好国・地域」(2022年3月9日記事参照)に代わり、アジア太平洋地域をはじめとした新規市場開拓が成功したことを挙げた。これに伴い、通貨ルーブルやそれら諸国の通貨による決済比率が高まっている(注)。

ロシアにとっての新たな市場との関係強化に向け、物流網の整備に注力する考えも示した。具体的には、国内鉄道・高速道路網整備とそれらのカザフスタン、モンゴル、中国の物流網との連結(2022年9月27日記事10月19日記事参照)。また、黒海・アゾフ海の港湾整備の進展と国際鉄道輸送路「南北」(2018年2月1日記事参照)との連結などを挙げた。

国内産業の育成・強化もあらためて強調した。製造拠点設立のための土地購入・施設建設や設備更新に向けた最大5億ルーブル(約9億円、1ルーブル=約1.8円)の低利長期融資を創設するほか、国産ハイテク機器・設備や人工知能(AI)導入の企業向け優遇税制の対象となる製品リストの策定を政府に命じた。

産業力強化のためには人材育成も必要となる。プーチン大統領は「実業分野で求められる人材の養成が急務」とし、電機・電子、工作機械、冶金(やきん)、薬品、防衛、農業、輸送、建設、原子力などの分野で専門の技術者を5年間で100万人養成する構想を披露した。

(注)ロシア中央銀行によると、2022年9月の外貨決済における各通貨の比率はドル33.9%(1月より17.8ポイント減)、ユーロ18.7%(16.4ポイント減)、ルーブル32.4%(20.1ポイント増)、人民元14.1%(13.7ポイント増)。

(欧州ロシアCIS課)

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