VWがスペインでEV電池工場着工、政府の電池生産支援が加速か

(スペイン、ドイツ)

マドリード発

2023年03月30日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は3月17日、車載バッテリー事業子会社パワーコ(PowerCo)がスペインのバレンシア州で電気自動車(EV)向け電池セル工場の建設に着工したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2022年3月28日記事参照)。新工場は2026年の稼働開始の予定で、スペインで初の車載バッテリー量産拠点となる。

パワーコの資料によると、同工場ではVW独自のバッテリーの標準規格で、生産車種の8割以上に適合する角型セル「Unified Cell(ユニファイドセル)」を生産する。

VWの発表によると、年間生産能力は40ギガワット時(GWh)、将来的には60GWhまで拡大が可能だ。主にバルセロナ県(注)やナバラ県にある完成車工場向けに生産する。同工場で将来的に3,000人以上を直接雇用することが見込まれる。なお、VWの自前の電池工場は現時点では世界3拠点で建設・計画中。2022年夏から建設中のドイツ工場、今回着工のスペイン工場に加え、3月13日には欧州外で初のカナダ工場の建設計画が発表された(2023年3月17日記事参照)。

スペインでは計4社がギガファクトリー建設予定

この工場は、VWがスペインで今後100億ユーロを投じる電動モビリティーエコシステム構築計画「Future:Fast Forward」の中核をなす。同計画は1月下旬、スペイン政府によるEUの復興基金利用の目玉「EV・コネクテッドカー分野の戦略的復興・変革プロジェクト(PERTE-VEC)」(2021年7月29日記事参照)の第1次公募採択プロジェクトの1つに正式決定した。地方自治体を通じた支援も含め、当初4億5,600万ユーロの補助金やソフトローンが付与される。

スペインではVW以外に、3社が電池セル工場の建設計画を進めている。地場のリチウム資源を利用する「Phi4Tech」や、中国の再生可能エネルギー開発大手「遠景科技集団(エンビジョングループ)」傘下のバッテリー企業エンビジョンAESC(2022年6月9日記事参照)が西部エストレマドゥーラ州で、それぞれ2023年夏から工場建設に着工予定とされる〔3月14日スペイン国営放送(RTVE)〕。北部バスク州でも、エネルギー研究機関からスピンオフした「バスクボルト(Basquevolt)」が2027年から独自開発による固体電池の量産を予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。しかし、いずれの計画もEU復興基金の利用は未定だ。

米国のインフレ削減法(IRA)成立後のグリーンプロジェクト誘致攻勢により、欧州からの電池生産投資の流出懸念が高まっていることを受け、政府はPERTE-VECの第2次公募については要件を緩和し、2023年6月にも電池工場の単独プロジェクトに特化した公募を行う予定と報じられている(ヨーロッパ・プレス通信3月22日)。

(注)VWグループ傘下のセアト工場。

(伊藤裕規子)

(スペイン、ドイツ)

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