EV・コネクテッドカー分野の復興プロジェクトを閣議承認

(スペイン、EU)

マドリード発

2021年07月29日

スペイン政府は7月13日、新型コロナウイルスによる危機からの復興計画における官民連携事業「電気自動車(EV)・コネクテッドカー分野の戦略的復興・変革プロジェクト(PERTE-VEC)」を閣議承認した。

PERTE-VECは、欧州2位の自動車生産国のスペインにおいて、自動車の電動化エコシステムを構築し、スペインを欧州有数の電動モビリティ拠点とすることを目指す、産業変革プロジェクトだ。同プロジェクトの投資規模は、民間と公的資金を合わせて総額240億ユーロに上る。約197億ユーロの民間投資を呼び込むほか、EUの復興基金を主に利用し、公的資金42億9,500万ユーロを投じる。「自動車のバリューチェーン変革」としてEV開発・生産支援(約30億ユーロ)のほか、人工知能(AI)・データ活用の促進、研究開発助成などを行う。また、「環境・基盤整備」としてEV、燃料電池車(FCV)購入や充電インフラ設置のための補助金(11億ユーロ)、第5世代移動通信システム(5G)網の整備、人材育成、法整備などを促進する。

完成車とバッテリーメーカーの連合が必須

PERTE-VECの申請はプロジェクト単位で行われ、(1)完成車メーカー、(2)EVバッテリーまたは水素電池メーカー、(3)EV基幹部品メーカー、の全てを含む5社以上の企業連合で参画することが条件となっている。さらに、参画企業の40%は中小企業でなければならない。2021年12月~2022年2月に公募・選定をし、2022年7月に資金援助の決定が行われる予定。

スペイン政府によると、既に複数の企業が申請を検討しており、企業連合のマッチングが進んでいる。最も進展しているのは、フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下のセアトと政府が中心となった官民連合で、VWの欧州3カ所目となるバッテリー工場を建設するプロジェクト。電力大手イベルドローラが再エネ電力・充電インフラ開発パートナーとなり、自動車部品大手のゲスタンプ、フィコサ、通信大手テレフォニカ、銀行、リチウム採掘、ロボティクス企業などを含む15社が参画している。VWは今後、バルセロナのセアト工場を全面的にEV生産向けとする意向を示している。

スペインの復興計画は、6月16日に欧州委員会による審査が完了し、7月13日にEU理事会の正式承認を受け(2021年7月15日記事参照)、最終的に補助金695億ユーロが割り当てられた。同復興計画では、グリーン化に40.29%、デジタル化に29.58%の予算を配分する。政府は2021~2023年の間に、重点政策10分野・30施策項目に対応した110件の投資計画で全額執行を目指す(2020年10月14日記事参照)。戦略的復興・変革プロジェクト(PERTE)は産業バリューチェーン単位の分野横断型プロジェクトで、国内の産業強化や雇用・経済成長の牽引役として期待されるほか、膨大な予算の効率的で効果的な執行も可能になるとみられる。今回発表された自動車分野に加え、水素、航空宇宙、農業、AI、高度医療システムの6分野が特定されており、閣議で順次正式に承認される予定。

(伊藤裕規子)

(スペイン、EU)

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