米国の1月貯蓄率は4.7%で改善傾向、暖冬などの影響で消費堅調
(米国)
ニューヨーク発
2023年02月28日
米国商務省経済分析局(BEA)は2月24日、2023年1月の個人収入支出状況を発表し、貯蓄率が4.7%になったことを明らかにした。貯蓄率は2022年6月の2.7%を底に、緩やかな改善傾向にある。
1月の雇用統計では、雇用者数の大幅な増加が示された(2023年2月7日記事参照)。1月の個人可処分所得はこれを反映して前月比2.0%増となり、過去1年で最も高い伸びとなった。また、個人消費支出は名目で3カ月ぶりの増加(前月比1.8%増)となり、先行して公表されていた小売売上高(2023年2月16日記事参照)と一致する動きになった。
消費の内訳について、財部門が前月より2.8%増加した。耐久財と非耐久財がそれぞれ5.5%増、1.2%増となり、いずれも3カ月ぶりに増加に転じた。サービス部門は1.3%増となり、2022年8月(1.2%増)以来の1%以上の高い伸びをみせた。また、実質でみても、個人消費支出は前月比1.1%増だった。1月の個人消費が堅調だった要因として、暖冬が挙げられる。これにより、人々が外出し消費も促進されたとみられる。また、社会保障給付などの支給額が、物価の上昇を加味して1月以降8.7%引き上げられたことも影響したという指摘もある。
米国では、賃金上昇率を上回るほどの高インフレにより、人々が新型コロナ禍で積み上がった余剰貯蓄を取り崩しつつ消費活動を行っているとされる(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)。1月の個人消費および個人所得は堅調だったが、新型コロナ禍以前の貯蓄率(7%程度)と比べれば(2022年3月1日記事参照)、余剰貯蓄の取り崩しという構造は変わっていないとみられる。ニューヨーク連邦準備銀行によると、2022年第4四半期の家計債務は前期比3,940億ドル増(2.4%増)の16兆9,000億ドルだった。このうち、クレジットカードローンが9,860億ドル(610億ドル増)を占め、新型コロナ禍以前の最高値(9,270億ドル)を上回っている。人々がクレジットカードローンを利用し返済を先送りしながら、徐々に余剰貯蓄を取り崩している様子がうかがえる。他方、余剰貯蓄も2023年のどこかで尽きると指摘されており、1月の堅調さがどこまで続くのか、不透明さが残る。今後の動向も、引き続き注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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