米とインド、半導体サプライチェーン強靭化のMOUを締結、貿易戦略対話の立ち上げにも合意

(米国、インド)

米州課

2023年03月14日

米国商務省のジーナ・レモンド商務長官は3月10日、インドのピユシュ・ゴヤル商工相と「半導体サプライチェーンとイノベーションパートナーシップ」と題する覚書(MOU)に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国インド戦略商業対話の中で行われた。米国とインドは1月末に行われた米印重要新興技術イニシアチブ(iCET)の第1回会合にあわせ、強靭(きょうじん)な半導体サプライチェーンの構築を目的に、米国半導体産業協会(SIA)とインドエレクトロニクス・半導体協会(IESA)が両国間の半導体エコシステムを強化するための民間主導のタスクフォースを立ち上げたばかりだ(2023年2月7日記事参照)。半導体分野で、両国の関係強化を加速させたい狙いがみえる。

両国はそれぞれ、半導体産業を支援する制度を有している。米国では、2022年8月に半導体製造施設の建設や拡張、研究開発などに対して資金助成をするCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)が成立し、2023年3月末から第1弾の申し込みが始まる(2023年3月1日記事参照)。インドでも、資金援助を受けたスタートアップが半導体のプロトタイプを製造できるチップイン(ChipIN)センターがあるなど(2023年3月9日記事参照)、半導体産業の活性化に向けた施策が複数ある。両国はこれら制度も活用しながら、今回署名された覚書に基づいて、半導体ビジネスに関する機会拡大などを調整するとみられる。レモンド長官は署名に合わせた声明で、「このMOUは、半導体サプライチェーンの強靭化と多様化に関する両国の協力体制を確立し、米国とインドにおける経済機会の創出を目指すものだ」と述べている。

また、レモンド長官は前日の9日に、スブラマンヤム・ジャイシャンカール外相とも会談し、輸出管理での協力や両国間の技術移転を促進することなどを目的とした、米国インド戦略貿易対話の立ち上げに合意した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同日に行われたレモンド長官と記者の電話会議によれば、米国で輸出管理を所掌する商務省安全保障産業局(BIS)が、この対話を主導するという(米国通商専門紙インサイドUSトレード3月10日)。ただし、詳細は公表されておらず、今後の発表が待たれる。

ジャイシャンカール外相との会談では、米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」についても議論された。レモンド商務長官は会談において、米国、インド、その他のIPEF参加国の経済競争力強化の重要性を強調した。米国では、IPEFに対して、市場アクセス交渉が行われないことなどにより、他の参加国、特に開発途上国などに参加するメリットがないとの批判がでている。こうした批判を意識してか、レモンド商務長官は「政府間協定を結ぶだけでなく、今年からIPEFの米国や(参加)地域の国々への恩恵、経済効果を実感できるようにしたい。それができないはずはない」と記者に対して述べている(通商専門誌「インサイドUSトレード」3月10日)。次のIPEFの交渉は、3月13日から19日にかけてインドネシアのバリで行われる予定だ。

(赤平大寿)

(米国、インド)

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