半導体設計の研究開発、人材育成に政府が支援

(インド)

ベンガルール発

2023年03月09日

インドの半導体エコシステム醸成をミッションとした会議のセミコンインディア(SemiconIndia)が224日、ベンガルールのインド理科大学院(IISc)で開催された。2回目の開催となった今回は、次世代の半導体設計関連のスタートアップの促進がテーマとなった。

ナレンドラ・モディ首相は開会あいさつで、インドは世界の半導体設計エンジニアの20%を占め、半導体設計企業のトップ25社の大半が国内に設計拠点や研究開発拠点を設置していると述べた。その上で、インドをエレクトロニクス・システム設計・製造(ESDM)の世界的ハブにするために、人材育成に注力することを表明した。

ラジーブ・チャンドラセーカル電子情報技術相は、2014年時点では国内で流通している携帯電話の8085%は輸入品だったが、2020年には100%自国生産ができるようになり、さらに、輸出も9,000億ルピー(約14,940億円、1ルピー=約1.66円)に達したと述べた。また、インドが近年、エレクトロニクス分野のサプライチェーンに精力的に参画していることをアピールした。インドが優秀なエンジニア人材やグローバルな製品、デジタル商品やサービスの供給で今後重要な役割を担うことを示し、半導体や電子機器分野の設計のエコシステムの醸成に向けた政府のイニシアチブの一部を発表した。

発表によると、台湾の工業技術研究院(ITRI)や米国のオールバニー大学やマサチューセッツ工科大学の研究所に並ぶ民間企業主導の研究センター「インド半導体研究センター(ISRC)」を発足させるとし、製造技術からプロセス技術まで半導体の最先端研究を行う。インド工科大学(IIT)やインド科学大学(IIS)などのアカデミアとも連携して研究、応用、知的財産化に取り組む。同センターには、試作品の製造や少量生産に対応できる半導体工場が併設される予定だという。

また、ベンガルールで発足した半導体のチップ設計をワンストップで行えるチップイン(ChipIN)センターにも言及した。同センターでは、集積回路や電子機器など電気系の設計作業の自動化を支援するツール(EDA)、ハードウエアをバーチャルで試作できる施設、複数のチップを1枚のウエハーに配置し組み立てる(MPW)サービス、設計フローのトレーニングプログラムなどが整備されており、設計が終わり、ファンドを受けたスタートアップはプロトタイプの製造ができる施設になっている。

さらに、3月には世界最大級のデータセットプログラム「インディア・エーアイ(India AI)」が開始され、今後はインテリジェント・コンピュート、AI(人工知能)コンピュート、デバイスやシステム設計での活用が期待されるという。

加えて、人材育成面では、2023年度内に産業界と学術界の専門家が集まり、半導体に関する新しい学位や選択科目、認定プログラムの検討を行い、インド全土の高等教育機関に展開することも発表された。インドに拠点のある大手半導体企業に対して、学生のインターンシップ受け入れを依頼する予定だ。

世界の半導体市場は2028年までに8,200億ドルに達する見込みとして、チャンドラセーカル大臣は、インドの半導体スタートアップに向けて政府が強力に後押しするメッセージを送った。

(大野真奈)

(インド)

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